<阪神7-4中日>◇3日◇京セラドーム大阪

 崩れることは許されなかった。阪神能見篤史投手(34)は再三走者を背負っても、淡々と投げ続けた。直球を内角に決め、フォーク、スライダーで要所を締めた。4回1死一、三塁からは福田を122キロで注文通りの遊併殺に切った。それでも6回に3失点して降板すると満足感はなく悔しさだけが残っていた。

 「白星がつくに越したことはないけど。チームが勝ってくれればいい。初回から点を取ってくれたので」

 託された開幕戦は巨人打線の猛打につかまった。5回もたずプロ入りワーストの10失点。それから5日間。調整は変わらなかったがグラウンドでは中西投手コーチから頻繁に声をかけられた。「しっかりしろって言っただけだ」。エースは口数を減らし、没頭した。

 「いろいろやることはあるんですけど、今できることをやろうとしている。とりあえず勝ってよかった」

 誓いを裏切ったようで、悔しかった。オープン戦最終登板の翌日、3月22日。能見は食事に誘われた。和田監督だった。2人だけの世界、そこで命運を託された。「福原とともに、投手陣を引っ張ってくれ」-。指揮官直々の言葉に、能見はしっかりうなずいた。勝利で安心させたかった。

 信頼が揺らぐはずなど無かった。託した和田監督は「どんなピッチャーでも1つ勝つまではしんどいからね」と安心。3回には左前適時打で、打っても“らしさ”を発揮した。初勝利まで1週遅れてしまった悔しさは、ここから白星を積み重ねて晴らしていく。【池本泰尚】