<ロッテ7-1日本ハム>◇6日◇QVCマリン

 9回まで144キロの速球で押し切った。マリン特有の風の助けを借りて、シンカーがさえた。ロッテのドラフト1位、石川歩投手(25)が、3安打1失点でプロ初勝利を完投で飾った。8回を終え、首脳陣から続投を打診され「いけます」と即答。最後は中田を遊飛に打ち取った。6回のマウンドに上がる前、雨による34分間の中断もあった。「正直、終わってくれって思ってました」と本音をもらしたが、最後まで集中力は切らさなかった。

 マー君世代の最後の大物だ。富山・滑川高時代は無名。中部大で注目を集めたが、プロ志望届は出していない。「大学の時、プロから声がかかっても、そういうレベルではなかったと思う。社会人2年目の時は、声がかかるものだと思ってなめていた。僕自身の問題として、プロ入りが遅くなったという思いはあります」。同世代がプロで活躍する中「あきらめかけたこともあった」と言う。回り道した分、大きくなれた。

 世代の先頭を走るヤンキース田中のことを「投げ合ってみたい素晴らしい投手」と評するも、理想の投手ではないという。「マー君は最後はスプリットでかわす。僕は最後まで直球勝負する投手を目指したい。まだまだですけどね」。目指すは田中以上。だからなのかルーキー一番乗りとなる完投勝利にも、浮かれることはなかった。

 「負けない男」だけは田中から引き継ぐ。オープン戦から8試合負けなし。昨季24勝0敗を記録した「マー君」ならぬ「アー君」の呼び名もついた。「周りからセンスないって言われましたけどね。でも僕はアー君でいいです」。負けない投球ができれば、呼び名は何でも構わない。遅れてプロ入りした悔しさを一気に爆発させるシーズンにする。【竹内智信】