<阪神5-6DeNA>◇8日◇甲子園

 甲子園が悲鳴に包まれた。まさか、まさかの逆転負けだ。阪神藤浪晋太郎投手(19)が4点リードの7回につかまった。ブランコにプロ初の逆転満塁アーチをバックスクリーンに運ばれた。快投を続けていただけに、痛恨の1球…。勝率5割復帰を逃し、聖地甲子園での初星も逃した。和田監督は「ベンチの責任」と自らを責めた。

 ラッキーセブンを待たずして、虎党のジェット風船がむなしく舞った。その中心で、藤浪はぼうぜんと立ち尽くした。スタンドが風船の黄色に染まり始めた7回2死から突然、崩れた。1点を返されて3点差とされ、なおも満塁。ここまで無安打に封じていたブランコへの初球カットボールが見入られたように真ん中に甘く入った。一瞬にして暗転。悲劇の放物線がバックスクリーンに達した。7回6安打5失点…。悲しすぎる黒星がついた。

 藤浪

 2アウトランナーなしだっただけに、もったいなかったです。(本塁打は)かなり甘かった。投げきれなかったのは自分の弱さ。

 1球で逆転を許した。6回までは2安打無失点の快投で、プロ初完投、初完封も見えてきたところだった。球数は6回までで83球。「制球は定まっていなかったけど、悪いなりに抑えられた」。順調にアウトを重ねていたが、抜け球が増えた。カウントを整えようとした決め球カットボールも真ん中に集まった。

 中継ぎ陣の不調もあり、交代は首脳陣の頭になかった。ブランコの次打者、筒香までいけば加藤の投入もあったが、昨季2本塁打されている大砲で勝負することを選択。和田監督は「代え時がはかれなかった部分がある。100球?

 そこらへんを乗り越えないと、完投できる投手になれない。7回やな。ベンチの責任やな」と藤浪をかばい、きびすを返して会見を切り上げた。開幕から続く投壊が止まらなかっただけに、若きエースにかかる期待は大きかった。

 前回の1日中日戦(京セラドーム大阪)でも好投しながら8回に突然つかまった。同じようなパターンで初勝利を逃してしまった。中西投手コーチは「3巡目というのもあるが、あそこまでは投げてもらわないと」。新人だった昨季までなら降板していた場面。立場が変わったことを象徴する続投だが、壁を乗り越えらない。

 甲子園開幕戦の連勝も7で止まった。立ち止まることなくクラブハウスへと引き揚げた藤浪。悔しさがにじむ、その後ろ姿がチームの現状を物語っていた。【池本泰尚】

 ▼藤浪が7回にプロ入り初の満塁弾をブランコに浴びた。満塁は1年目の昨年は24試合で9回あり7打数1安打、1四球、1犠飛、被打率・143。今季は2試合の登板で、1日の中日戦の満塁機では森野に犠飛。今季2度とも失点している。