<ヤクルト3-5巨人>◇17日◇神宮

 同点、決勝、決勝、連弾の“数え役満”だ!

 巨人阿部慎之助捕手(35)が2試合連続で2本塁打を放ち、チームを連勝に導いた。前日16日の同戦でも延長10回の決勝ソロ本塁打を含む2本塁打。2戦連続でのマルチ本塁打は、04年の4月28、29日のヤクルト戦(神宮)以来、10年ぶりだった。バレンティンに2発浴びたが、キッチリ2発でお返し。主砲同士の派手な打ち合いを制した。

 2度目のハイタッチも、鉄仮面のままだった。阿部はベンチで迎えるチームメートに、手を合わせるだけだった。連夜の2発は10年ぶりだった。はじけていいはずの試合後も「そうだね」を繰り返す。単独2位に浮上したくらいでは、笑えなかった。勝負はこれからも続く。喜怒哀楽で敵に胸の内を悟らせず、勝負師の鉄則を貫いた。

 フルスイングのリーチ1発で、ダイヤモンドを“アガり”続けた。その集中力と破壊力は、攻め一辺倒の打ち筋で相手の戦意を刈り取る“雀鬼”と重なった。同点で迎えた4回に「決勝」ソロ。5回は「連弾」ソロ。前日16日の「同点」「決勝」と合わせて「数え役満」の4発だった。前夜は乱闘寸前の荒れた場と化したが、力ずくで強い巨人を取り戻した。

 気晴らしの趣味として、マージャンをたしなむことがある。「僕はそんなに強くないんですよ。大勝ちするか、大負けするか、はっきりしてます。相手がリーチでも関係ないです。絶対に守らないんです」と豪快に笑う。マージャンの打ち筋には、人間性がハッキリ出るといわれる。攻め通して大勝ちを狙って、大ダメージを与える。上げ潮を狙うチームにとって、最高の2発だった。

 同じく2発のバレンティンと打ち合った。阿部は最後、巧みな配球で読み勝った。9回、マウンドに上がるマシソンのお尻を“ポン”とたたき、気持ちを落ち着かせた。先頭打者はバレンティン。乱闘騒ぎの当事者だった右腕を導き、2球目からスライダーの4連投で空振り三振に仕留めた。はやる気持ちの心理を利用した妙手だった。通算331本目で、松井秀喜の記録に“リーチ”をかけた。【久保賢吾】

 ▼阿部が2試合連続で2本塁打を放った。2戦4発は04年4月11、13日、同28、29日(2戦5発)以来10年ぶり3度目。1試合2本塁打以上は通算28度目。巨人では王95度、松井40度、長嶋36度、高橋由31度に次ぎ、原に並ぶ5位タイとした。阿部は通算331号。巨人では王868本、長嶋444本、原382本、松井332本に次ぎ、松井に1本差と迫った。神宮では通算30本目。球場別では横浜(29本)を抜き、東京ドーム(178本)に次いで2番目に多い。