<西武6-3オリックス>◇19日◇西武ドーム

 西武菊池雄星投手(22)の288日ぶり勝利への思いがボールに乗った。5-3で迎えた8回無死一塁。打席には5日に手痛い3ランを浴びたオリックスのペーニャを迎えた。1発を許せば同点だ。2-2からの7球目。146キロ速球が内角をえぐり空を切らせた。表情はグッと引き締まった。「真っすぐが生命線。1、2球内に入ったらホームランだけど突っ込めた。力で勝負できたのは収穫だった」。最速は150キロだった。

 12日の札幌遠征。花巻東の後輩である日本ハム大谷との投げ合いに負けた試合後、伊原監督から注文を受けた。「大谷に比べて若々しさが足りない。四球を出しても怒らないから、思い切った投げっぷりを見せてくれ」と。この言葉に背中を押された。

 さらに帰りのバスの中で「次の試合はセットで投げろ」とのアドバイスも受けた。試合中に修正するためセットに切り替えることはあったが、開始からは初めてだった。「立ち上がりからバタバタすることなく投げることができた」と、成功だった。3回から8回まで先頭の初球はすべてストライク。この間、走者を出したのは2イニングだけだった。

 昨年7月5日に9勝目を挙げた後、左肩を痛め8月7日に抹消。そこから長いリハビリとの闘いだった。「もう今年は勝てないのかなと本当に思いました。監督も我慢して使ってくれて」と、しみじみ話した。伊原監督は「去年のいい状態に戻ってきた」と評価。8回3失点は信頼回復への白星となった。【矢後洋一】