<中日4-10阪神>◇22日◇ナゴヤドーム
誰だ、甲子園じゃないと勝てないなんて心配していたのは。阪神藤浪晋太郎投手(20)が3点リードを守れず降板したナゴヤドーム。追いつかれてから突き放したのは新井さんだ。8回1死満塁の代打で初球打ち。三遊間を破る決勝適時打だ。ゴメスが3号2ランで開幕22試合連続出塁を決めた日。最強の控えが今季初V打で4連勝、貯金6を運んできたぞ。
勝負師のひと振りだった。同点とされた直後の8回1死満塁で、代打新井が告げられた。切り札の登場に左翼スタンドの虎党が沸く。背番号「25」に期待という名の重圧がのしかかる。ただ新井貴浩内野手(37)には迷いも、ためらいもなかった。中日田島の初球だった。144キロ速球を振り抜いた。
「打てると思った球にどんどん反応していかないと。思い切りよく、振ろうと決めていた」
7回まで3点をリードしながら、藤浪が急変して同点に追いつかれた。嫌な流れを寸断し、勝負を決めてみせた。
代打で迎えた今季、いつくるかわからない打席に向けて日々、準備を続ける。何日も、打席に立たないかと思えば、チャンスは突然やってくる。13日巨人戦では同点で1死満塁、この日と同じ場面で代打に立った。結果は一ゴロ併殺だった。
「終わったことは変えられない。次へ、次へと切り替えていくしかない。過去は変えられないから」
満員のスタンドからため息を浴びても、また翌日から、1打席、1球への準備を始めなければならない。
プロ16年目、テーマは「原点」だという。オフの始動は母校広島工を選んだ。例年の筋力トレではなく、打って、守って、走ることからスタートした。広島工には野球少年としての原点があるという。
「メチャクチャきつかった思い出しかないよ。なんかあったら走らされていたし、何もなくても走らされていた。理不尽にやらされる。でもな、振り返ってみると、それが自分の実になっている。ケガに強い体をつくれたのも、精神的な面でも。この年になって思うけど、無駄なものなんてないんだなと思う」
37歳のいまも衰えを感じないという肉体と、出場機会に恵まれなくとも常に前を向き続ける精神力。今、新井は原点に感謝しつつグラウンドに立っている。
かつて鬼門と言われたナゴヤドームを制し4連勝を呼び込んだ。この日の勝負には勝った。ただ、夜が明ければ、また新井は日々の準備へと戻っていく。いつくるか知れぬ1打席、1球のために-。【鈴木忠平】



