<巨人4-1DeNA>◇23日◇鹿児島

 巨人が鹿児島で「懐刀」を抜いた。前夜、宮崎ではアンダーソンが「一太刀」の満塁弾でDeNAを斬った。一夜明けて繰り出したのは、新たなお家芸である足技だった。

 同点の7回だ。無死一塁で代走に鈴木。打者橋本。韋駄天(いだてん)コンビでまず、仕掛けた。犠打の構えを見せ、2ボールからの3球目。原監督は「走力のある選手がいてくれた。思い切って」とバスターエンドランを敢行した。両者の足を警戒し、崩れたシフトの間を破る。無死一、三塁から手を緩めず、一気に足でたたみかけた。

 橋本が二盗。決勝打の坂本勇人内野手(25)が二盗。記録には残らなかったが、さらに2度も一塁走者がスタートを切って、エンドランの形を作った。鴨池球場の黒土は、桜島の火山灰が多く含まれる。通常と異なるコンディションでも関係なく、足で重圧をかけ、均衡を破った。

 走塁改革は2年前の4月26日、鹿児島が原点だった。開幕ダッシュに失敗し、最下位でこの地に乗り込む直前。非公開練習を実施し、ほとんどを走塁練習に費やした。15-3の完勝で浮上のきっかけをつかみ、優勝まで駆け抜けた。足技は順調に育まれ、片岡の加入で盗塁王4度の技術を共有し、大きな鼓動となった。片岡は「勇人はどういう意識でスタートを切ってますか、と聞いてくる。全員の意識が高い」と驚いた。

 準備も見逃せない。キャンプで反復するゲーム想定の守備練習。当初はスタッフが走者を務めたが選手に変更し、意識を徹底させた。昨年、選手が走塁中に指を骨折した教訓から、走者は手袋の着用か、手袋を握ることを義務化。ケガも未然に防ぐ。盗塁数はリーグトップの24個。「年々意識は高くなっています」と言う坂本はリーグ単独トップ8盗塁。3連勝で貯金6。巨人が走る。【久保賢吾】