<広島5-11巨人>◇26日◇マツダスタジアム

 なじみの右翼席からヤジが飛んだ。古巣相手に初先発した巨人大竹寛投手(30)はその声をわずかに聞き取り、マウンドを降りた。6回、先頭の2番菊池から単打のみの5連打を浴び、3点を献上。「(ブーイングは)交代の時くらいですかね。自分自身にどういう風に投げるのか期待していましたが、まだまだ。平常心で入ったつもりが、最初だけだった」。勝ちを拾っても、4失点では素直に喜べなかった。

 さらなる高みを目指し新天地に移った。24日の練習日。報道陣から広島ファンのブーイングについて問われると、少し時間を置いて「自分は何も言いません」。大竹の名が球場にコールされ、マウンドに向かう際も広島ファンのヤジはあった。「何か不思議な感じでした」。複雑な思いを静めて、5回まで3安打1失点で乗り切り、味方に主導権をもたらした。

 FA移籍とともに、古巣への愛着を断ち切り、巨人色に染まる覚悟を決めた。1月に第1子が誕生。海外ブランド「GAP」へ子ども服を買いに行った時だった。Gと印字された服を前に、自然とオレンジカラーに手が伸び、購入した。カープの燃える赤から、巨人への忠誠を誓った。

 今季3勝目は古巣からの初勝利で、史上15人目となる12球団全てから勝ち星を挙げた。そんな快挙にも「ただ、チームが勝つことが出来て良かった」。謙虚に勝利を積み重ねる。盟主の一員にふさわしい気構えだった。【栗田尚樹】