<阪神1-0広島>◇29日◇甲子園

 阪神鶴岡一成捕手(36)にはベテランの妙味があった。女房役の手本を示したのは、わずか1点リードの9回だ。1死一塁。俊足の赤松が代走起用されると、メッセンジャーに4度けん制を入れさせ、直後にウエスト。矢のような送球で二盗を阻んだ。

 初回には丸が試みた二盗も刺し、メッセンジャーを乗せていた。そして9回に助っ人を完封勝利に導く完璧なディフェンス。最後の盗塁阻止を「ベンチから(ウエストの)サインが出ていたので」と振り返ったが、まさに殊勲の働きだ。公式戦初バッテリー。変化球を積極的に用いる配球で勝負した。「メッセと話し合って会話の中で。球も良かった」。試合前には2人で入念に打ち合わせた。広島との17日の対戦時は6回6失点で敗れた。被弾していたエルドレッドにはインハイ直球で空振り三振に導き、剛柔を織り交ぜた。

 一大事も救った。先発した試合は8勝1敗。26日には藤井が右足甲を負傷して出場選手登録を抹消された。窮地でこそ、プロ19年目の落ち着きが光る。「与えられたチャンスで頑張るだけ」。長い年月で積み上げたものは、揺るぎのない実力だ。