<日本ハム8-0DeNA>◇24日◇札幌ドーム

 日本ハム中村勝投手(22)がプロ初完投勝利を、初完封で飾った。緩急抜群の投球術で被安打6、自身2連勝。埼玉・春日部共栄時代に「埼玉のダルビッシュ」と呼ばれたかつてのドラフト1位が、プロ5年目で進化を証明した。

 マウンドにできた祝福の輪の真ん中にいた。俳優・岡田将生似と評判のイケメンぶりが、際だった。「女子高生デー」と銘打った一戦。主役になっても「まだ僕のファンじゃないと思うので…」と、浮かれず余韻に浸った。

 ブレークの兆しには、秘めた根拠がある。確信は4回。1死二塁でブランコを見逃し三振に仕留めた。1-0から96キロのスローカーブに手を出させず、並行カウントへ。1球挟んで再びボール先行の2-1から、ほぼ2球目と同じ軌道の103キロ変化球で外角低めを突いた。空振りで追い込む。最後は137キロ内角低め直球。視覚効果抜群の緩急が効いた決め球だった。

 この日の生命線は90キロ台後半と100キロ台前半の緩い変化球。同球種と形容されるが、投げ分けている。100キロ台前半は、今季から本格使用を開始した縦のスライダー。昨季まで軸だったスローカーブより、制御しやすい類似変化の球種をマスターした。

 通算6勝目。通算30試合目の登板ながら12年2勝が年間最多と伸び悩んだ。目を潤ませ感動の瞬間を見つめた栗山監督は「精度が上がった。ここからが勝負」と尻をたたいた。中村は「マウンドに立てる喜びを感じている」としみじみと言った。迷走してきた未来が、少し真っすぐに開けてきた。【高山通史】