<巨人6-0楽天>◇29日◇東京ドーム

 エースが勝った。巨人内海哲也投手(32)が、7回4安打無失点の好投で今季初勝利を挙げた。開幕から好投しながらも、白星に恵まれず、自身ワーストの9試合連続で未勝利。苦悩の日々を真骨頂の粘りの投球で乗り越えた。チームは単独2位浮上。エースの復調とともに、チームも勢いに乗る。

 腹の底から叫び、拳を握った。7回1死一、二塁、併殺でピンチを断った内海は、失策を犯した中井を笑顔で迎えた。「大丈夫や」。拳を重ね、後輩の心を和らげた。6回2死、ジョーンズの打席で左太ももがつっても、応急処置で続投を志願。泥くさく、粘っこく、仲間を思いやる投球はエース内海の真骨頂だった。

 苦しくても、前向きな姿勢を貫いた。19日の練習、杉内からの一言に、示し続けた姿が集約された。「4週間勝てなくても、きつかった。でも、てっちゃん(内海)は8週間。なのに、いつもと変わらず、頑張ってる」。勝てなくても、表に出さず、早出練習を欠かさなかった。「空元気を通り越したら元気になる、ですよ」。背中を丸めなかったエースを仲間は信じた。

 勝利を追い求め、自問自答する日々は、自らの目標に通じた。「何で、こんなに勝ちたいって思うんやろ」。4日の中日戦の登板後、すしをつまみながら、山口に尋ねた。ジッと考え込む山口を見て、こう言った。「勝てなくて、気付いたんよ。やっぱり、200勝したいんやと。頑張るわ」。敗戦の暗さはなく、決意に満ちた表情だった。

 自宅に帰れば、一家の“柱”に戻った。時間さえあれば、休養日は家族で外出。劇団四季の「リトルマーメイド」で心を癒やされ、遊園地「プレジャーフォレスト」では子供と走り回った。「元気をもらってるのは自分。子供の笑顔って、ほんまに魔法や」。家族との一時は苦しさを忘れさせ、笑顔を取り戻せた。

 「遅くなって、すみません」。待ちわびたファンに頭を下げた。「苦しかったけど、いつか、こういう日が来ると思って、一生懸命頑張った」。拍手に包まれ、初勝利の味が染み渡った。「今日が一番良かったか、と言われればそうでもないし、追い求めていかないと」。長かった2カ月。尊く、重かった1勝が、逆襲の号砲へと変わる。【久保賢吾】

 ▼登板10試合目で初めて4点以上の援護をもらった内海が今季初勝利を挙げ、開幕からの連敗を5で止めた。内海の楽天戦は通算8勝1敗となり、交流戦は通算20勝目。交流戦20勝以上は5人目だが、杉内(巨人)はソフトバンク時代に18勝しており、パ・リーグ球団から20勝は内海が初めてだ。内海は昨年まで4年連続2ケタ勝利。最近では開幕6連敗の10年石川(ヤクルト)が13勝、同じく6連敗の91年長谷川(オリックス)が12勝したが、巨人で開幕5連敗から10勝した投手は過去にいない。内海はここから2ケタ勝てるか。