<イースタン・リーグ:西武5-10DeNA>◇3日◇西武第2

 DeNAに新加入したキューバ代表のユリエスキ・グリエル内野手(29)が、強烈な日本デビューを飾った。イースタン・リーグ、西武戦で初実戦に臨み、第2打席にバックスクリーンへ弾丸ライナーを飛ばした。この1発を見届けた中畑清監督(60)は、尊敬してやまない恩師の長嶋茂雄氏(巨人終身名誉監督)に似ていると最大級の賛辞を贈った。今日4日も同戦に出場し、6日の日本ハム(横浜)で1軍デビューとなる。

 日本の青空を切り裂いた。4回1死、グリエルが来日2度目の打席に入った。西武先発中崎を前に、カウント3-0からの4球目、真ん中高めの直球を豪快に振り抜いた。「長い間、実戦から離れていたので生の投手を感じながら打席に入ることを考えてた」。あいさつ代わりの1発をバックスクリーンにぶち込んだ。

 バットに当たった瞬間は、誰も本塁打と想像できなかった。打球音は鈍く、詰まったように見えた。だが、打球は失速するどころか勢いを増した。軽々とフェンスを越える打球は、まさに規格外。観客からもどよめきがわき起こった。

 視察に訪れていた中畑監督も最上級の賛辞を贈った。「集中力がすごいね。天性というか本能が日本でいうと長嶋さんだね」。長嶋氏と同じように、グリエルもキューバの英雄として国民の期待にこたえ続けてきた。この日も注目される日本での初実戦。周囲の期待、重圧を力に変えるところは、尊敬する恩師にかぶって見えたのだろう。第3打席の2球目にはフルスイングの空振りで、観客を沸かせた。長嶋氏のお株を奪うシーンでもあった。

 準備も着々と進んでいる。この日は日本のメーカーが用意した、キューバ時代と同じ880グラムで34インチのバットで臨んだ。来日してからの3日間は、毎回違うバットを練習で試した。「キューバのバットと比べると柔らかい感じがした。もう少し硬い方が良いかな」。試行錯誤を続け、6日の日本ハム戦(横浜)での1軍デビューに向かう。

 今日4日も同戦に出場し守備もつく。中畑監督は「二塁と三塁を半々ぐらいで出てもらう」と起用の青写真を描く。5月31日に来日してから4日目で実戦までこぎ着けた。急ピッチでの調整に疲れの色も見えるが「太陽(の日差し)が思ったより強い」と上空を見つめた。グリエルが日本の地で太陽のように強烈な輝きを放つ。【細江純平】

 ◆中畑監督と長嶋氏

 長嶋氏が巨人監督を務めていた79年、中畑は三塁の定位置を獲得。同年秋の伊東キャンプ(静岡)でノックを受けるなど、中畑監督は長嶋氏を「おやじ」と呼ぶ。93年から2年間、第2次長嶋政権では打撃コーチ。04年アテネ五輪では日本代表のヘッドコーチを任され、病に倒れた長嶋監督に代わって指揮を執った。