マエケンに勝て-。前半戦を3連勝で締めた阪神藤浪晋太郎投手(20)が、今日25日の広島戦で後半戦初先発する。相手は球界を代表する前田。チームにとって天敵の先輩右腕は、球宴で多彩な変化球を操る感覚も助言してくれた。自分を認め、アドバイスをくれたマエケンに“恩返し”の好投を見せる白星で、3位広島を突き落とし、首位巨人追走へ再び勢いをつけてみせる。

 本拠地で首位巨人に勝ち越した。上々の後半戦滑り出しを見せた猛虎の次なる相手は、1・5差の3位に迫る広島。先陣を切るのは藤浪だ。広島は虎を引きずり下ろそうとエース前田をあえて、ぶつけてきた。2位と3位のつぶし合いは極上の投げ合いで幕を開ける。24日、甲子園で汗を流した藤浪は球界を代表する右腕との先発対決について、素直な思いを口にした。

 「相手投手と対戦するわけではないので、意識することはありませんが、いい投手に勝つことは大事。相手のエース級に勝つことでチームも勢いに乗れることがあるんで。勝てるように努力したいです」

 猛虎にとって天敵中の天敵と、今季初めて顔を合わせる。昨季は6試合対戦して1勝4敗、45イニングで2点しか奪えなかった。だが、その唯一の白星は藤浪と投げ合った時のもの。11年以降、虎がマツダスタジアムで前田に黒星をつけたのは、その1度しかない。しかも前田は今季、同球場で無傷7連勝と無類の強さを誇る。藤浪は相手投手を意識することはないが、この一戦の勝敗が持つ意味の大きさは十分に理解していた。マエケンに勝つ-。これが後半戦スタートのテーマとなる。

 尊敬する相手でもある。2年連続で出場した球宴では同じセ・リーグの仲間として戦った。スター選手同士が交流するチャンスに、藤浪は変化球について質問したという。

 「どういう感覚で投げているんですか?」

 前田は代名詞のスライダーをはじめ、キレ、制球力ともに抜群の変化球を多彩に操る。藤浪の質問に、投手にしか分からない感覚を言葉にしてくれたという。

 「もちろん、参考にはしたいと思います」

 球団の枠を超えて、アドバイスしてくれた相手に対して、刺激を与えるような投げ合いを演じることが“恩返し”にもなるはずだ。

 「優勝に向かって、やるだけなんで。毎回、安定したピッチングができるようにしていきたい」

 後半戦、藤浪がいくつ貯金できるかは、そのまま逆転優勝への1つのカギになる。それを自覚したような言葉だった。【鈴木忠平】<阪神藤浪と広島前田の投げ合い>

 ◆13年7月7日マツダスタジアム(4-0)

 試合前の時点でチームが3戦3敗、23イニング無得点だった広島前田と初の先発対決。雨で開始が30分遅れたが、初回を3者凡退で切り抜けて責任投球回数の5回を無失点。6回表に鳥谷が前田に先制ソロを浴びせ援護を受けた藤浪は6回裏も0点で抑えた。7回表の攻撃中に雨で試合が中断されたこともあり、6回3安打無失点で交代。42日ぶりの白星を挙げ、前田との先発対決で勝利投手となった虎投は安藤、能見に次いで3人目だった。