<広島3-4阪神>◇25日◇マツダスタジアム

 阪神藤浪晋太郎投手(20)は必死に引き出しを探った。広島前田との投げ合いは、何度も土俵際に追い込まれる劣勢。1回に2点を失い、その後も何度も走者を背負った。6回8安打3失点で、3者凡退に封じたのは5回だけ。6回に田中にカーブを運ばれた右越えソロを悔やんだが、土俵は割らなかった。

 「よかったと言える立場ではないけど、チームが勝ってよかった。序盤にゲームを崩さなくてよかった。でも、6回の本塁打は不用意でした。反省です」

 探り当てた引き出しは今季から本格的に解禁した変化球とのコンビネーションだった。8安打を浴びながらも8奪三振。直球で奪ったのは3つ、カットボール2つ、スプリット3つ。抜け球もあったが、緩いカーブも要所で投じた。直球とカットボールで勝負していた昨季に比べ、増やしていた引き出しだった。

 「配球にアクセントをつけたり、梅野さんと相談しながら工夫していきました」

 序盤は自慢のカットボールは左打者に踏み込まれ、流し打たれていた。中盤以降、加えたアクセントが効果を発揮。ボール先行の投球を“ごまかした”。左打者を5人並べられ、8安打のうち7本が左だったが、試合中の修正力がそれを上回った。普段辛口の中西投手コーチも「序盤は横振りだったが、途中で修正できた。悪いながらも粘り強く投げた」と及第点をつけた。

 試合前まで4戦3勝の広島キラーとして送り込まれた。白星こそはつかなかったが、最低限の仕事を果たした。工夫と粘り。藤浪の粘投が、逆転劇を呼び込む一因となった。【池本泰尚】