<日本ハム5-2ソフトバンク>◇1日◇札幌ドーム

 大ベテランからの5連打だ。日本ハム稲葉篤紀内野手(41)が、今季初タイムリーを放ち5連続適時打を呼び込んだ。2点を追う7回1死一、二塁から、1点差に迫る左前適時打を放ち、逆転劇の先陣を切った。札幌ドームでは3月29日オリックス戦以来の先発起用に応え、貴重な今季2安打目。チームは5連勝で今季最多タイの貯金4とし、8月反攻をスタートさせた。

 無数の期待に応えた。稲葉がビッグウエーブを起こした。2点を追う7回1死一、二塁。好機の打席で恒例の「稲葉ジャンプ」で迎えられた。「気持ちが1つになりましたね」。大ベテランの気分は高揚。必死に食らいついた。フラフラと舞い上がった打球は左翼の前へポトリ。二塁走者の中島が生還して今季初適時打。「今年も開幕したな~という感じですね。最高ですね」。ここぞの場面で打つところが百戦錬磨の役者。仕事を果たして笑顔満開だった。

 3月28日の開幕戦オリックス戦(札幌ドーム)以来の打点は、打線にも火を付けた。せきを切ったように、後続が続いた。大引、代打の小谷野、近藤に大野。怒濤(どとう)の5者連続適時打。6回まで1安打しか放てなかった摂津をKO。一気に流れを引き寄せた。アブレイユが腰の違和感を訴えて欠場。稲葉に今季4試合目のスタメンのチャンスが回ってきた。「勝ちたいなという気持ちでした」と燃えていた。

 日本の現役名球会選手として、威厳を示した。「アジアンフェスタ2014」と銘打たれた一戦。陽岱鋼がシンボルアンバサダーで、試合前から出身の台湾メディアも多数駆けつけていた。中国時報のウー記者は地元の大スターとともに、不惑を超えたスラッガーの近況も気になっていた。「イナバ、ダイジョウブ?

 ダイダジャ、ダメダヨ!」と現状を心配していた。

 台湾でも稲葉の知名度は抜群だ。09、13年のワールド・ベースボール・クラシック日本代表としての活躍も、よく知られている。昨年11月には小久保監督率いる新生侍ジャパンの台湾遠征に参加。選手ではなく、コーチとしての同行も、到着時の空港ではファンに囲まれる人気ぶり。4月に左膝を手術し、7月に1軍復帰したことも報道されている。現地メディアも注目する中で、逆転勝利の口火を切った。「いい形でチームも勝って良かった」と胸をなで下ろした。

 明日3日に42歳を迎えるが、打撃は上り調子だ。栗山監督も「もう今しかないと思った」とアブちゃんの代役として真っ先に指名。期待に応えた。チームは今季3度目の5連勝。首位ソフトバンクとは7ゲーム差に詰めた。稲葉はお立ち台で「ミラクル・ファイターズ。これからです!」と叫んだ。日本ハムの生きるレジェンドが、逆襲ののろしを上げた。【木下大輔】