<阪神5-4DeNA>◇1日◇甲子園

 甲子園の「卒寿」に花を添える快投だ。阪神藤浪晋太郎投手(20)が、7者連続奪三振の球団タイ記録をマークした。2回、2失点しなお無死一、三塁。3者連続三振で危機を脱すと、4回先頭バルディリスまで奪三振ラッシュを演じた。4回には自らのバットで勝ち越しとなる2点打もマーク。1924年(大13)8月1日に甲子園が誕生して90年。聖地の歴史に名を刻んだ。

 村山実、小山正明、江夏豊、小林繁…。阪神歴代のエースが幾多の名勝負を刻み、無数の汗と涙を流してきた。阪神先発は藤浪。運命に導かれるように甲子園90周年記念日のマウンドに立った。そして「申し子」と呼ばれるゆえんを、プレーで表現した。

 7回11安打4失点。7回には同点に追いつかれて降板するなど、満足できる内容ではなかったが、この日ばかりは甲子園の主役は藤浪だった。曇天に合わせて、56年に設置されたナイター照明が1回から点灯。カクテル光線に照らされて、背番号19が輝いた。

 「7回は粘りきらないといけないところでした。でも四球とか余計な失点ではないので、次につながる。ボール自体はよかった」

 歴代エースたちに並んだのは連続奪三振だった。2回から4回1死までバント失敗を含む7者連続。カットボール、スプリット、自己最速タイの156キロを記録した直球が猛威を振るった。8人目に四球を与えてリーグ記録は逃したが、小山、村山、江夏、能見に並ぶ球団記録だ。

 「全然知らなかったです。たくさんとっているな、という感じだけでした」

 表情を変えることなくやってみせると、打でもみせた。同点の4回、1死二、三塁から一時勝ち越しとなる2点適時打。「当たれば何とかなると思って、必死でバットを振りました」。思い返せば大阪桐蔭時代には3年のセンバツ九州学院(熊本)戦、夏の天理(奈良)戦でアーチをかけた。理詰めでは説明できない力が、確実に働いていた。

 大阪桐蔭では史上7校目の春夏連覇を達成。ドラフトでは4球団競合の末、甲子園が本拠地の阪神に入団。1年目に10勝を挙げた。何かに守られているかのような、不思議な感覚。甲子園への思いをこう語る。

 「憧れの地から職場に変わって、景色も多少違うところがある。野球の聖地と呼ばれるところを本拠地にする喜びはあります」

 勝敗こそつかなかったが、記念日に記録を残した。歴代エースの中に、藤浪晋太郎もその名を刻んだ。お預けとなった8勝目、自己最長タイの4連勝は、甲子園からの宿題ということだろう。【池本泰尚】

 ▼藤浪が2回の井納から7者連続奪三振。連続奪三振のプロ野球記録は57年梶本(阪急)58年土橋(東映)の9者連続だが、阪神では56年小山、60年村山、71年江夏、11年能見に次いで5人目の球団タイ記録。藤浪は20歳3カ月でマーク。7者以上の連続奪三振の年少記録を出すと、(1)62年尾崎(東映)17歳7カ月(2)14年藤浪(阪神)20歳3カ月(3)68年森安(東映)20歳4カ月(4)54年金田(国鉄)20歳10カ月。藤浪は尾崎に次ぐ年少2位で、セ・リーグでは金田を抜いて最年少となった。