<日本ハム5-2ロッテ>◇12日◇札幌ドーム

 先制弾で火を付けた。「5番DH」で先発した日本ハム大谷翔平投手(20)が、先制の6号ソロ本塁打で中軸トリオ計3発の先陣を切った。2回、ロッテ大嶺祐の142キロ直球を左中間スタンドへ運び、野手出場13試合ぶりのアーチ。4番中田、3番陽岱鋼も1発を放ち、チーム6年ぶりのクリーンアップそろい踏みで、連敗を7で止めた。

 大谷のバットが、6年ぶりの興奮を呼び込んだ。先頭打者の2回。「真っすぐに絞って」。142キロ内角直球を、左中間スタンドへ運んだ。約1カ月ぶりの1発は、連敗中のチームを鼓舞する貴重な先制アーチ。4回の中田、5回の陽岱鋼へと続く、ホームラン攻勢の火付け役になった。「甘いところに入ってきたボールをしっかりとらえられました。前に走者がいなかったので、自分のスイングができればいいと思っていました」。クリーンアップの本塁打そろい踏みは、08年以来の快記録だ。

 責任を背負っていた。3日ソフトバンク戦と10日の同戦に先発登板し、連敗。チームの7連敗中、2つの黒星は自分がつけたものだ。特に10日は自己ワーストタイの9被安打、5失点と炎上。ベンチで降板を告げる首脳陣に「まだいけます」「もう1回いかせてください」という“恒例”の言葉も、出てこなかったという。完膚なきまでにたたきのめされた。193センチの体を、「屈辱」が支配していた。

 自己最多130球の熱投から、中1日しかたっていない。だがそれは、挽回のチャンスがすぐに巡ってきたということでもある。「(投手と野手を)別々に考えているので、そういうのはないと思います」。本人は否定する。だが勝利に貢献したいという思いは、マウンドでも打席でも同じ。やり場のなかった悔しさを、一振りに込めた。登板の次戦で本塁打を放ったのは、プロ入り初めてのことだった。

 この日は全体練習が始まる直前、栗山監督が全選手、コーチを外野の一角に集めた。グラウンドで訓示するのは、開幕戦をのぞけば異例。「勝ちたい、勝ちたいじゃなくて、原点に戻って、今日1日終わった時に、やり残したことがないようにしよう」。選手たちの重圧を取り除こうと、指揮官が選んだ言葉。大谷の先制弾は、その言葉を後押しし、重たい空気を完全に吹き飛ばした。テレビカメラの前で感想を問われ「ふつう!」と突き放した同監督も、インタビューが終わると「ああは言ったけど…すごいホームランだったね」。思わず本音が漏れた。

 4回には内野安打で出塁し、今季12度目の複数安打も記録。「ロッテにも(差を)詰められていた。カード頭を取って、3連戦勝てるようにしたいと思っていました」。霧は晴れた。残り43試合に、大谷が光をさした。【本間翼】

 ▼大谷が先制の6号。大谷は投手で今季9勝しており、同一シーズンに「9勝以上+6本塁打以上」は、22勝で6本塁打した62年金田(国鉄)以来、52年ぶり。他に9勝以上で本塁打も6本以上打ったのは1リーグ時代の49年服部(中日=24勝、6本)とセ・リーグの50年藤本(巨人=26勝、7本)51年別所(巨人=21勝、6本)だけ。パ・リーグでは大谷が初。