<阪神4-3広島>◇26日◇甲子園

 巨人優勝をアシストする1勝で阪神は逆転2位に首の皮一枚、残った。ライバル広島に3点リードを許した6回裏。マートンの適時打と福留の9号3ランで鮮やかに逆転。順当なら今季最終先発の藤浪晋太郎投手(20)が昨季を超える11勝目を挙げた。和田監督は就任3年目で通算200勝目を飾った。

 阪神藤浪は呉昇桓の火消しをベンチ最前列で見つめた。福留の逆転弾はキャッチボール中に目撃した。自己最多の11勝目は味方につけてもらった。自分の白星に笑顔はまったくなし。6回6安打3失点に、表情を変えることなく淡々と反省の言葉を並べた。

 「11勝目?

 特に何もないです。内容がよくなかったし、野手のみなさんに感謝したい」

 1回に広島丸に先制打を許した。4回にも1点を許し、6回にも失点。内角を積極的に突いたが、コースを狙った球が甘くなった。走者の動きを気にしてか、自らブロックサインを出す場面まであった。試合はつくったが、逆転した6回に好機で打席が回ってくると、代打を告げられた。

 「(7回も)行けと信頼してもらえるような投手にならないといけない。悔しかったです。(今季は)もがき苦しみながら、勝ちをつけてもらいながらのシーズンでした」

 今季予定されている最終登板で、満足のいく投球はできなかった。「自分に満足、という意味での慢心は生まれないタイプ」と自己分析するほど、負けん気が強い。向上心を持って努力を重ねてきた男に、ナインも力を貸してくれた。

 野球は失敗のスポーツ。大阪桐蔭の恩師、西谷浩一監督の言葉だ。「名将の名言は他にもいろいろありますよ」と笑うが、藤浪を支えてきた言葉でもある。6歳からの野球人生は「目の前の課題を克服すること」を繰り返した。努力と負けん気。そして西谷監督が「指先は本当に器用だった」と認めるセンスで「失敗」を克服してきた。

 チームもこれで2年連続勝ち越し決定。就任3年目の和田監督に、通算200勝をプレゼントした。広島をたたき、本拠地開催の可能性をわずかに残したCSが次の舞台。「登板があれば最高の投球をしたい」。昨季敗戦の悔しさは必ずかえす。続く道を真っすぐ見つめた。【池本泰尚】