巨人原監督が阿部指導なら、阪神和田豊監督(52)は上本再生だ。9日の全体練習で打撃不振に悩む上本博紀内野手(28)を和田監督が熱血指導。甲子園の室内練習場で80分間、マンツーマンの打撃特訓だ。明日11日初戦のCSファーストステージ広島戦へ向けて、キーマンの復調のため突貫工事だ。

 暑かった。甲子園新室内練習場の扉は閉まっていた。関係者しか入れない密室からは、乾いた打球音が響き続けていた。1時間を超えるマンツーマン指導を終えると和田監督は「暑いんだよね」と帽子をとった。髪には季節外れの汗がベットリ。一方で、その晴れやかな表情には満足感がうかがえた。

 シート打撃が終わり、最後のフリー打撃が始まるときだった。室内へ移動した上本のあとを追うように、和田監督が歩を進めた。途中まで見守ってグラウンドへ戻る予定が、なかなか出てこない。気付けば屋外の打撃練習は終わっていた。「まあ、全部だな」。技術的なこと、精神的なこと。同じ巧打の二塁手だった現役時代も思い起こしながら、決戦への熱いレクチャーは止まらなかった。

 「その(不調)時期が長くて、それが普通の状態になっている。明日は(CS初戦)前日なので、今日は徹底して、もう1回、これでいこうやというものを再確認した。ここが元気じゃないと」

 虎の選手会長は今季、初めて規定打席に到達した。開幕直後に負傷した西岡の穴を埋めながら、1番として活躍。猛虎打線をけん引してきたが、最後にしぼんだ。ラスト7試合は30打数1安打。復調のきっかけにと期待した7日のフェニックス・リーグDeNA戦も5打数無安打だった。

 初めてレギュラーとして戦った疲れは十分に理解している。「そこを吹っ切ってね。CSに入っていかないと」。この日のシート打撃も上半身と下半身がバラバラだったが、「おかわり」した第4打席で一、二塁間を破った。少しの光が見えた直後の猛特訓だった。

 上本は「頑張ります」と静かに闘志を燃やした。和田監督が引き揚げたあとも、1人でティー打撃や鏡でのスイングチェックをしていたという。今日10日に続投要請される虎将は就任以来、3年連続でスローガンを「熱くなれ!」にしている。開戦迫る日本一への争い。タテジマの戦闘服をまとってきた誇りとともに、熱くなる。【近間康隆】