<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-2阪神>◇第4戦◇29日◇ヤフオクドーム

 阪神が壮絶に敗れた。延長戦までもつれた「SMBC日本シリーズ2014」第4戦。10回、2死一、二塁から悲劇に襲われた。頼みの守護神・呉昇桓(オ・スンファン)がソフトバンク中村に直球を右翼席へ運ばれ、まさかのサヨナラ負け。阪神は初戦に勝利してから3連敗となり、日本一に王手をかけられた。徳俵まで追い詰められた和田虎よ、底力を見せてくれ!

 信じたくなかった。悲しき白球は三塁側ベンチの和田豊監督(52)のライン上にのびていった。着弾を待つまでもない。右翼席への弾道。悲しき結末は分かっていた。サヨナラ3ラン…。指揮官は珍しくイスに座ったまま腕組みししばらく立ち上がらなかった。隠せないショック。時間を置いて現れた会見場では相づちが続き、最後の最後に前を向いた。

 和田監督

 何としても甲子園に戻って勝負できるように、明日やるしかない。

 10回の攻防が明暗を分けた。猛虎は1死一、三塁の絶好機に頼みのゴメスが三ゴロ併殺。その裏、2イニング目の安藤が先頭明石に四球を与えた。1死後にはバント処理した藤井の二塁送球が野選となり、ピンチを広げた。ここで呉昇桓を投入。力勝負を続けた8球目で終わり「勝負にいったことやから」。シーズン終盤から獅子奮迅の守護神を責めることはできない。

 一進一退の攻防で「静」だった。序盤で崩れそうな先発岩田は、続投で立ち直らせた。大一番で選手を信用した。7回のピンチをしのいだ岩田がベンチへ戻ると、ポンポンと肩をたたいてねぎらった。

 ただ、ポストシーズンに見せてきたのは、攻めのタクトだった。6回1死一、二塁の勝ち越し機は、8番藤井と9番大和を打たせて連続三振。今シリーズ初めてベンチ入りした新井や新井良もいた。さらに、15回まで想定して、結果的に呉昇桓を苦しい場面から託した。日本シリーズは03年から敵地で8連敗。「内弁慶」の打破へ、もう勝負手を繰り出すしかない。

 和田監督

 いずれにしても打ち合いになるような投手じゃないのは確かなんで。チャンスを作りながら、そこで1本出るかどうか。そこだけ。

 眠りの長い虎は、この日も4安打だった。第2戦から1点、1点、2点。「とっておきの代打」の関本を7番三塁に起用し、右肘に不安のある西岡を指名打者にしたが完全に起きなかった。シリーズ初戦勝利のあと、2戦目から3連敗した過去8度のうち、3連勝しての逆転日本一は55年の巨人だけ。いよいよ崖っぷちに立たされた。「29年ぶり」の悲願は、夢のまま終わるのか。簡単に諦める道では、ないはずだ。必ず帰る。決着は甲子園でつける。【近間康隆】

 ▼阪神は第1戦○の後、第2戦から●●●。過去このパターンは8度あったが、3連勝して逆転日本一を果たしたのは55年の巨人だけ。阪神が挽回して日本一となれば、59年ぶり2度目となる。また、第1戦から3連敗の後で4連勝しての日本一は2度あり、58年西鉄、89年巨人が記録。また86年西武は第1戦△のあと3連敗→4連勝で日本一となっている。