DeNAから戦力外通告を受けた藤井秀悟投手(37)が引退することが26日、分かった。2度のトライアウトを受け、現役続行への道を模索したが、NPBからのオファーはなく、引退する意思を固めた。「可能性を信じてやり続けてきましたが、今ある現実を受け止めて、次の道に進もうと思います」と話した。

 父の笑顔が見たくて、野球を続けた。家族に勧められ、小2の時に野球チームに入団。中学、高校、大学と進学の度、母に「やめるよ」と伝えたが「お父さんが悲しむよ」と説得されたという。「習い事が好きじゃなかったし、野球だけと思われたくなかった」からだが、活躍する度、父行則さん(64)の見せる笑顔が最高にうれしかった。

 波瀾(はらん)万丈の野球人生だった。高校、大学、プロと合わせ、4度も肘痛に襲われ、03年には靱帯(じんたい)断裂の手術を受けた。「ケガをしなかった野球人生を知らないですから。あきらめずに、いろいろやってきたから、今がある」と後悔はなかった。

 ヤクルトに逆指名で入団し、最多勝を獲得。日本ハムへのトレード、FAでの巨人入団、人的補償での移籍も経験した。「どんな形でも、やめれば悔いは残ると思う。4球団も行くとは思ってなかったけど、その分友達も増えた」と出会いに感謝した。先日、グラウンドをランニング中、ふと思った。「俺、野球が好きになってる」。大好きなマウンドに別れを告げる。

 ◆藤井秀悟(ふじい・しゅうご)1977年(昭52)5月12日生まれ、愛媛県出身。今治西、早大を経て99年ドラフト2位でヤクルト入団。01年に最多勝を獲得した。08年にトレードで日本ハムに移籍。10年に巨人にFA移籍し、12年には人的補償でDeNAに移籍した。通算284試合に登板し83勝81敗、防御率3・77。175センチ、86キロ。左投げ左打ち。