阪神が球団創設80周年の来季、甲子園のマウンド改造を検討していることが3日、明らかになった。11月の日米野球で使用した硬質の土を用意。メジャー仕様への変更を検討している。近年は硬めのマウンドにする球場も増えており、まずは来年2月、春季キャンプのブルペンでテスト導入し、選手の意見を聞く。ランディ・メッセンジャー投手(33)や藤浪晋太郎投手(20)も硬いマウンドを好んでおり、快投の後押しになりそうだ。

 球団創設80周年を迎える来季、甲子園が新たなモデルチェンジを模索する。ひそかに温めてきた腹案はマウンドの改良だ。米大リーグで採用される硬い土を用いて固めるプランが浮上。球場関係者は「よければ使おうかという検討の段階です。メッセンジャー投手や藤浪投手も硬いマウンドを好みますから」と話した。

 キッカケは11月に行われた日米野球だった。夏場以降、米国からもグラウンドキーパーが訪れ、プレーするフィールド状態についてリクエストがあった。その1つがマウンド。いまも粘土ブロックが埋まり、以前に比べて足場は硬い。新たに用意しているのは「マウンドクレイ」という土だ。メジャーでも用いられる粘土質のタイプを用意し、投手プレートから6足半ほど捕手寄りの投手の着地点あたりを固める構想だ。

 黒土の甲子園は他球場に比べてマウンドも軟らかめだとされる。近年は東京ドームのほか、マツダスタジアムなどメジャー型のマウンドを採用する本拠地球場もあり、いまやトレンドになっている。すでに投手コーチ側にも伝えており、来年2月の春季キャンプでメジャータイプのブルペンを準備する。選手から投球時の感触をヒアリングするという。

 パフォーマンス向上にも一役買うかもしれない。球場関係者は「マウンドが掘れにくくなる。特にリリーフ投手にとっていいかもしれない」と話す。踏み出した足の着地に安定感があれば投球の力強さは増す。足場が荒れにくければ救援投手も安心してグイッと踏み込める。何より、メッセンジャー&藤浪のエース格2人にとっても朗報だろう。

 11月16日に東京ドームでの日米野球で登板した藤浪も「僕は基本的に硬い方が好きです。日米野球のときも問題なかった。投げやすさはあります」と話し、リニューアルを“歓迎”する。今季、甲子園で9戦先発の6勝1敗、防御率3・22だった。聖地の申し子にとって「鬼に金棒」だろう。

 まずは2月のキャンプで投手の声を聞く。高評価なら、本格的な検討に入る。村山、江夏、バッキー、藤川…。一流投手の汗や涙がしみ込んだマウンドも新時代を迎えようとしている。

 ◆マウンドの規定

 公認野球規則に野球競技場の区画が定められている。ホームから60フィート6インチ(18.44メートル)の位置に投手板の前縁を置き、直径18フィート(5.486メートル)の円で囲んだ部分がマウンド。傾斜は開始箇所(投手板の前縁から6インチ前方)から6フィートの箇所まで6インチ、1フィートにつき1インチでなければならない。この勾配は各球場同一と定められているが、硬さや土の質についての明記はない。

 ▼他球場のマウンド

 東京ドームは大リーグ仕様で硬めと言われている。「マウンドクレイ」を使用している。マツダスタジアムは12年5月から東京ドームと同じくメジャー仕様を採用し「マウンドクレイ」を使用。神宮球場は昼間にアマ野球が使うため、ナイター時には土が軟らかくなり室内練習場やブルペンと硬さが違った。15年シーズンから「マウンドクレイ」を使用することを検討中。ナゴヤドーム、ヤフオクドーム、札幌ドームは硬めと言われるが、独自の方法で固められている。