中日山本昌投手(49)が真のレジェンドへの道を歩み出す。8月でついに50歳に到達。今季登板を果たせば年長出場の世界記録を打ち立てる。日刊スポーツでは元日特別企画として、野球からプライベートまで50の質問をぶつけ「マサの考え」を集約した。目標は10勝。その挑戦には、確固たる根拠があった。

 柔和な表情だった山本昌が何度か真剣な表情で即答したことがあった。その1つが「2015年の勝利数」を聞かれたときだ。

 「10勝するつもりで、やります」と明言した。

 目標の1つ、140キロを出す自信についても「ある」と即答した。今年8月で50歳。常識を超越した年齢に入ってくるが、本人は無謀な挑戦とは思っていないのかもしれない。

 進化していると思う部分の問いに「反射神経」と答えた。最も年齢に反比例すると考えられる分野。にわかに信じ難いが、長年、初動負荷トレーニングに取り組んできた成果に手応えがある。イベントや取材ラッシュだったこのオフも、寸暇を見つけてトレーニング室に足を運んでいる。

 トレーニングによって合理的な体の使い方が年々身につき、関節の可動域も広がっている。長く現役を続けるコツは「しつこいこと」。今季に向けて投球フォームも少しいじった。チャレンジを恐れず、立ち止まることを自分に許さない。実践と継続、変化を繰り返してここまできた。

 「(昨季)最後に何試合か投げたが、あのくらいの力をシーズン通じて出せれば貢献できると思う」。体さえ万全ならまだやれると信じている。

 目の不安が解消されたことも大きい。昨季終盤、視界がかすみ捕手のサインが見えないほど右目の網膜剥離が悪化していた。シーズン後すぐに手術。今はほぼ正常に戻った。新年早々にはコンタクトレンズを着用できる。練習量の制限も解除されている。10勝、140キロという目標設定の根拠はそろっている。

 今年、1勝でもすればジェイミー・モイヤー(元ロッキーズ)が持つ世界記録を更新する。50歳という節目の数字よりも、意識するのは世界一という事実。昨年は「レジェンド」で流行語大賞対象者の1人に選ばれたが、受賞を喜ぶ一方で、少し違和感もある。「世界記録をいただいたときにその言葉を使える資格が少し出るのでは」。

 プロ32年目。最後に目標を聞くと、これも即答だった。「勝つ、です。これしかないでしょう」。チームの勝ち、自分が投げた試合の勝ちにこだわり続け、山本昌は本当の伝説になる。【取材・構成=柏原誠】

 ◆山本昌(やまもと・まさ=本名・山本昌広)1965年(昭40)8月11日、神奈川県生まれ。日大藤沢から83年ドラフト5位で中日入団。94年に沢村賞となるなど、中日のエースとして活躍。14年9月5日阪神戦で、48歳0カ月でのプロ野球最年長先発勝利を挙げた。186センチ、87キロ。左投げ左打ち。