単身で己を鍛え、勝負する。南国の地で単身トレを敢行中の巨人片岡治大内野手(31)が12日、取材に応じた。1月上旬から沖縄で、毎日約7~8時間のハードなトレーニングに没頭する。トレーナー、打撃投手らサポート態勢も完璧な中、練習はほぼ1人。己に打ち勝ち、河野(阪急、中日)以来、史上2人目の両リーグ盗塁王を目指す。

 聞こえるのは、息づかいだけだった。片岡は自らの心と勝負した。1本、2本、3本と本数を重ねる度、体はきつくなる。「さぁ、もう1本」。心を鼓舞しながら、ダッシュを繰り返した。「人と勝負する前に、自分に負けてたら話にならないんで」。目に見える目標物はなく、あるのは自分の意思。前だけを見据え、力強く地面を蹴った。

 沖縄のグラウンドを転々とする片岡が、取材に応じた。例年は都内だったが、今年は初の沖縄単身トレを敢行。テーマは「ダッシュ漬け」に設定した。約2時間のウオーミングアップの後、「しっかり走って、下半身を作る」とショートからロングまで約1時間走り込み。昨オフは左膝裏の状態を見ながらだったが不安もなく、制限を解除した。

 定位置奪取に、決意の単身トレだった。理由を聞かれ「1人が好きだから」と笑ったが、本心は「自分のペースで、自分を冷静に見つめ直して。自分に勝たないと」と言った。井端が開幕スタメンを掲げ、寺内も虎視眈々(たんたん)と狙う中、片岡にも意地がある。昨季は4年ぶりに100試合以上の出場も、満足感はなかった。移籍2年目、さらなる高みを追求する。

 足で勝負する。3年ぶりの2ケタ盗塁となる24盗塁を記録したが、目標に掲げるのは盗塁王の奪還。「まだまだ、走り続けたいんで。もう1度、タイトルをかけて、勝負する」と力を込めた。練習からホテルに引き揚げた時には、外は真っ暗。南国の地で1人、勝負への準備を整える。【久保賢吾】

 ◆巨人片岡の14年

 巨人に移籍1年目の昨季は、4年ぶりに100試合以上の出場、3年ぶりに2ケタ盗塁となる24盗塁を記録した。それでも、07年から4年連続で盗塁王を獲得した足のスペシャリストは「130試合近く出たら、30個はいかないと」と悔しがった。得点圏打率は3割3分3厘をマークしたものの、打率は2割5分2厘に終わった。