【カーソン(米カリフォルニア州)15日(日本時間16日)=四竈衛】8年ぶりに日本球界への復帰する広島黒田博樹投手(39=前ヤンキース)が、同地での自主トレを公開し、決断までの経緯や今季の抱負を語った。自らの野球人生で「残された球数は少ない」と考え、古巣復帰を決意。先発の責任として2桁勝利を挙げ、「責任が果たせなければ、区切りを決める」と、引退覚悟でシーズンに臨む姿勢を明らかにした。

 スッキリした中にも、黒田の表情には、確かな覚悟が浮かんでいた。約40人の報道陣が集まった会見。昨季終了以来、悩み抜いた末、古巣復帰を決断するまでの経緯について、飾ることなく口にした。「今年2月で40歳。あと何年野球ができるか分からない」と話したうえで、さらに続けた。「1球の重みを考えた場合、カープで野球をする方が、それを感じられるんじゃないかと判断した。僕に残された球数はそんなに残っていないと思う。気持ちも含め、そっち(広島)の方が充実感があるんじゃないかと判断しました」。

 過去数年、オフを迎えるたびに、メジャー残留、引退、日本球界復帰の3択で悩み続けてきた。周囲の「まだやれる」の声をよそに、精神的疲労に襲われた13年オフは、引退に大きく傾いた時期もあった。元来、気持ちで投げるタイプ。常に「これが最後になるかも」と言い続けてきたのは、黒田の本音であり、生き方だった。

 昨季はバテがちな8月以降に復調。最終的に199イニングを投げたことで、現役続行への手応えを感じた。あとは、プレーする場所を選ぶ段階へ移った。米球団から年俸15億円を超える高額オファーを受ける一方で、常に声をかけてくれる古巣広島への思いは消えるどころか、日増しに大きさを増した。昨年12月26日、国際電話で返事をする瞬間まで気持ちは揺れた。ただ、戻るタイミングは逃したくなかった。「最後はそこでマウンドに上がれば納得できるというか。日本で投げずに野球人生が終わった時に、何か引っかかるものがあるんじゃないかと考えました」。

 決めた以上、腹はくくった。前田、大瀬良ら若手先発陣の手本となるうえでも、結果は求められる。自らに課したノルマは2桁10勝。「責任が果たせなければ、どこかで覚悟を決めなきゃいけない時が来ると思います」。いつ終わっても悔いを残さない。国やチーム、環境が変わっても、マウンドに向かう黒田の心意気が変わることはない。