こりゃ、本物や。阪神ドラフト2位石崎剛投手(24=新日鉄住金鹿島)が30日、沖縄・宜野座球場のブルペンで初めて捕手を座らせてピッチング。捕手の後ろで投球を見守った能見篤史投手(35)が「プロでも通用する」と太鼓判を押した。即戦力151キロ右腕がいよいよ、プロ初のキャンプを迎える。

 パラパラと雨が降り肌寒かったブルペンに、石崎の「よしっ!」と熱のこもった声が何度も響いた。初めて捕手を座らせて42球。最速151キロの直球を投げ込む姿を、ジッと見つめる男がいた。すべての球を見ていたわけではないが、わざわざ捕手後方のネット越しから投球をチェック。昨年を含め開幕投手を3度経験している左腕は、ドラフト2位右腕のピッチングに感嘆の言葉を並べた。

 能見

 球が速い。落ちてこないというか、独特の真っすぐだった。今日、初めて見たけど、社会人を6年間やっていたから、しっかりとした下半身をしている。パワーピッチャーだね。確かに(阪神には)いないね。

 プロ11年目を迎え、数々の投手を見てきた左腕にとっても、インパクトは大きかったようだ。「十分、プロでもやっていける。問題ない」とまで言い切った。投球を受け終わった清水は石崎に近づくと「いい球だったよ」。ただ、賛辞を受けても当の石崎本人は反省の言葉を発した。

 石崎

 ずっと(捕手を)立たせて投げていたから、少し浮くような傾向がある。突っ込まずに下を意識していきたい。課題も見えた。克服して実戦へつなげたい。

 改善点を次につなげる。前日29日のブルペンも、中腰の高さでの投球だった。そのため高めに投げる感覚が残っていた。「まだ納得していない。宿舎に帰ってノートに反省していきたい」。社会人時代からノートに気づいたところや反省点を記入。そうして成長してきた。称賛された直球も、きっとまだまだ進化する。

 この日で沖縄・合同自主トレは打ち上げ。「監督やコーチ陣が合流する。しっかりアピールして、1軍で使ってもらえるかどうか判断してもらいたいです」。即戦力と期待される右腕の実力が試される。

 【宮崎えり子】

 ◆石崎剛(いしざき・つよし)1990年(平2)9月9日、茨城県生まれ。三和3年夏は、10球団26人のスカウトを集めながら茨城大会1回戦敗退。新日鉄住金鹿島に進み、昨年の都市対抗に富士重工業の補強選手として出場し優秀選手。昨年ドラフト2位で阪神入団。スライダーの切れとテンポの良さに高い評価が集まる。183センチ、88キロ。右投げ右打ち。

 ◆石崎これまでの調整

 阪神入団が決定後、年末年始はノースローでじっくりと体作りに努めた。茨城県内での自主トレでは、1月4日に初投げ。8日に始まった鳴尾浜での新人合同自主トレでは、先頭をランニング。同期入団選手に積極的に声を掛けるなど、リーダーシップも示した。12日の3000メートル走ではスタートから独走し、11分35秒でゴール。初ブルペンの18日、荒れ球ながら威力満点の45球。隣で投げていたドラフト4位守屋が「バズーカみたいな球」と驚いた。翌19日には和田監督が初視察し「力で押せるタイプ」。27日には投球を受けた片山ブルペン捕手が「浮き上がると言うより、落ちてこない」と表現した。