藤浪よ、虎投よ、オレのエース道を学べ!!

 阪神の沖縄・宜野座キャンプで臨時コーチを務める江夏豊氏(66=野球解説者)が1月31日、読谷村の宿舎に入り、チームに合流した。40年ぶりタテジマの一員として参加するキャンプで注目するのは、エース候補藤浪のキャッチボールから。基本にこだわりながら、伝説の左腕が大黒柱のあり方を伝授する。

 上り詰めた頂が高ければ高いほど、立った人にしか分からない視界が広がっている。かつて阪神のエースに君臨した伝説の左腕にとって、球界のエース候補藤浪はどう映るのか。キャンプイン前日の夕方、読谷村の宿舎に入った江夏氏は野球人の血が騒いだ。

 「藤浪君は阪神だけじゃなく、リーグや日本球界を代表する投手になってもらわないといけない器。じっくり見させてもらうよ。藤浪君の場合、ブルペンも大事だけど、キャッチボールから。どういうキャッチボールをするか見てみたい」

 後に続く後輩へ、思いを伝える。基本に忠実で、細やかな投球理論を持つ江夏氏にとってキャッチボールは生命線だ。「投手にとってキャッチボールが一番大事だから。キャッチボールの延長がブルペン。ブルペンの延長がマウンド」と説く。しっかり指にかかっているか。バランスよく投げられているか。球の回転や軌道はどうか。失速していないか…。現役時代から、野球少年でも必ず行う基本中の基本であるキャッチボールにこだわり、自問自答しながら投球を磨いた。

 近年のキャンプはブルペン投球の内容や球数がクローズアップされるが、20世紀を代表する左腕は足元を見つめ直す。藤浪に対してもキャッチボールのイロハからこだわる。江夏氏には持論がある。「自分の考え方は古いかもしれないけど…」と前置きしながら「真っすぐを投げるべきケースで球が変化すると、それほど情けないことはない」と熱弁を振るう。現代野球は速球でもムービングボールがもてはやされるが「美しい速球」こそ、打者を抑える最大の武器だと強調する。

 「真っすぐは、いい打者になればなるほど怖い。ホームランバッターへの1打席目、懐への真っすぐで凡退させると、どれだけ考えて、どれだけ悔しがるか」

 藤浪は新人イヤーの2桁勝利など、数々の記録で現役時代の江夏氏に並ぶ。追ってきた背中が目の前にある。許された者しか目指せない偉大な足跡だ。レフティーの立ち居振る舞いにはエースになるヒントが詰まっている。【酒井俊作】