「アーリーワーク」で1軍だ!

 広島は13日、今秋のドラフト1位で指名した岩本貴裕外野手(22=亜大)と東京都内で契約交渉を行い、契約金1億円、出来高払い5000万円、年俸1500万円で仮契約を結んだ。プロ入りに備えて、現在は午前6時台からの早朝練習に積極的に励む。日本一に輝いた西武が導入した練習方法と同じだ。プロでも「練習の鬼」と化し、開幕1軍メンバー入りを狙う。(金額は推定)

 まだ街が眠っている午前6時過ぎから、熱気にあふれていた。肌寒い早朝の陸上400メートルトラックには、岩本の足音が響いた。子供のころからのあこがれだった広島からドラフト1位で指名されても、気のゆるみはない。異例の早朝練習で約1時間のランニング。野球へのあくなき向上心が即戦力スラッガーを突き動かす。

 岩本

 朝7時前から1時間走ったり…。大学の授業が2限からなので。(練習メニューは)自由なんで、やらなくてもいい。でも、自分の中で練習しておかないと落ち着かないです。習慣がついてしまっている。

 東都大学リーグを終え、あとはプロ入りを待つ立場だ。残り少ない学生生活を満喫するでもなく、早朝に起きてストイックに体を動かす日々を過ごす。広島と契約交渉に臨んだこの日も午前5時過ぎに起床。汗を流したあと、席に着いていた。交渉に当たった苑田スカウト部長も「『ブレーキをかけてやるくらいの感じが必要』と聞いている。それくらい練習が好きです」と苦笑い。1日24時間を有効に使う工夫だった。

 まさに「早起きは三文の得」だ。西武では今季から大久保打撃コーチが導入したメジャー式「アーリーワーク(朝練習)」が定着。デーゲーム時には、朝7時から若手選手が打ち込むなど、豊富な練習量もあり、日本一に輝いた。岩本の場合は早朝ランニングが中心だが、圧倒的なトレーニング量が結果につながった。昨季リーグ史上初の1試合3本塁打を記録するなど、長距離砲の基礎を築いた。

 岩本

 練習は大事です。技術をつけていかないといけない。人よりも練習していかないといけないということ。無駄な時間をなくして、自分を磨いていきたいです。(開幕1軍が目標か問われて)やるからには上を目指して一生懸命頑張りたい。負けず嫌いなんで。

 プロ入り後も、早出練習を敢行する考えだ。小学校のころは広島市民球場に通いつめ、前田智、緒方、金本(現阪神)らスター選手のプレーに心を奪われた。いずれも猛練習で地位を勝ち取ったプレーヤーだ。岩本も野球漬けの日々を過ごし、偉大な先輩のあとを追う。【酒井俊作】