大学生投手が豊作といわわれる今年の「プロ野球ドラフト会議」が28日、都内で開かれる。今回、静岡県の高校、大学生でただ1人「プロ志望届」を提出した浜松大のエース星山広宣投手(4年)は、浜松市北区の同大グラウンドで静かに運命の時を迎える。

 全国的には無名だが、元プロ野球選手の祖父を持つ146キロ右腕の潜在能力は、計り知れない。愛知・豊橋中央では夏の県大会1回戦敗退も、強肩と巧打の外野手として期待され、浜松大に入学した。だが、右腕不足のチーム事情で投手に復帰し、1年秋に新人賞。今秋は6勝を挙げて初のベストナインに輝いた。

 中学、高校、大学とも入学当時は野手だった。投手としての実力に、やっと自信を持てるようになった昨年秋、女手一つで育ててくれた最愛の母敏子さん(43)に「プロになりたい」と打ち明けた。すると母は「自分がやりたいように生きなさい。そういえば、お前のじいさんもプロだったのよ」。初めて聞く衝撃の事実に仰天し、絶句した。

 慌てて調べると、名古屋在住の祖父晋徳(しんとく)さん(72)は、中京商(現中京大中京)の4番一塁手として56年センバツで全国制覇。大阪(現阪神)、中日、国鉄(現ヤクルト)に計8年在籍した。「驚きました。もっと前に知りたかったですけど…」。この日までに具体的な指名の情報はないが、12球団どこでもOK。育成枠でも構わない。たとえ今回指名されなくても、祖父のいた最高の舞台に挑戦し続けるつもりだ。【大石健司】