来夏開催予定のアジア野球選手権大会(台湾)で、日本ハムがドラフト1位指名した東海大・菅野智之投手(22=東海大相模)が日本代表入りする可能性が4日、浮上した。菅野は11月21日に入団拒否を表明。どこのチームにも属さず来秋ドラフトを待つと決めていた。浪人中は基本的に対外試合に出場できないことが最大のネックだが、国際大会の代表となれば、願ってもない実戦の場を得ることになる。

 “1浪”を決めた157キロ右腕に、思いがけないチャンスの兆しだ。来年8月に台湾で開催予定のアジア選手権に、日本代表として出場できる可能性が出てきた。4日、都内で行われた第2回オリンピックベースボールプレイヤーズクリニックで、全日本アマチュア野球連盟の鈴木義信副会長が「選択肢としてはあり得る」と話した。

 菅野は11月21日の会見で、1位指名した日本ハムの入団拒否を表明。来秋ドラフトで再度対象選手となるべく、社会人や独立リーグに進まず浪人の道を選んだ。だが一方で、現在所属する首都大学連盟への選手登録期間も切れる。学生として公式戦や対外試合には参加できない。長く実戦から遠ざかるのは、投手にとって大きなリスクといえる。

 そこでアジア選手権だ。次回大会は、大学生と社会人でベストチームを組む方針という。「アマチュア」が条件なら菅野も含まれ、「日本代表」というチームに入れば、その中の試合には出場できる。鈴木副会長は「素質では菅野君はずばぬけている」と実力を高く評価した。ドラフト1位指名を拒否し、どのチームにも所属しない“ドラフト浪人”は江川卓、元木大介に次いで3人目。仮に菅野が代表に選出されれば、初の事例になる。

 しかし、追い風ばかりではない。現行のドラフト制度はプロ側、アマ側が要望を出し合い、現時点でもっとも合理的な形を追求してできたもの。鈴木副会長も「指名された選手はその球団に入るのが基本」と話す。入団拒否で、制度そのものを“否定”した菅野の代表入りを歓迎すれば、撤廃された逆指名を推奨する形にもなりかねない。反対意見は避けられない情勢だ。

 鈴木副会長が「慎重に協議しないといけない」というように、実現には越えなければならない壁がある。だが日本は今年のW杯で1次リーグ敗退と、バッテリーを中心に強化の必要があるのも事実。日本学生野球協会にも、社会人を統括する日本野球連盟にも競技者登録されていない、前代未聞のアマ日本代表が誕生するかもしれない。【鎌田良美】