ヤクルトが、藤浪争奪戦に参戦する。9日、都内の球団事務所で小川淳司監督(55)、衣笠剛球団社長兼オーナー代行(63)らが参加して、スカウト会議を行った。席上、25日のドラフト会議で大阪桐蔭・藤浪晋太郎投手(3年)を1位指名することを決定し、公表した。すでに大阪に本拠地を置く阪神、オリックスが藤浪指名を公言しているが、最大級の評価は揺るぎない。クジは、小川監督が引くことも決まった。

 ドラフト会議の2週間以上前に、ヤクルトの方針は決定した。1位は即戦力投手に絞り、春先から視察、検討を続けてきた。会議を終えた衣笠球団社長兼オーナー代行は「大阪桐蔭の藤浪で決定しました」と言った。春夏甲子園、国体と3冠を達成した右腕にヤクルトの未来を託す考えだ。

 ヤクルトはクジを回避することが多い球団だった。すでに2球団が1位指名を公表する藤浪に参戦することは異例。そこには、即戦力投手獲得を希望する小川監督ら現場の強い意向が反映されている。最近2年間は山田、川上と2年連続で高校生野手を指名。今季3位に終わった要因の1つは、由規、松岡、林昌勇ら、けが人続出で投手陣の層が薄くなったことだった。

 ビデオでチェックを繰り返した小川監督は「春夏甲子園に国体と力を発揮したすごいピッチャー。ぜひ一緒にやってみたいという思い」とほれ込んだ。150キロを超える速球派の長身右腕は、ヤクルトにはいないタイプ。亜大・東浜、東海大・菅野、花巻東・大谷、東福岡・森を含めた5投手の中から最終決定した。

 東京に本拠地を置くヤクルトが大阪桐蔭の選手をドラフト指名するのは史上初。現在チームでは背番号「17」「18」が空き番号で、藤浪獲得が決定すればエース番号を用意することになる。10年は小川監督が日本ハム斎藤を外し、昨年は衣笠社長が中日高橋周を外した。今年は小川監督がクジを引く。「いい方法ないかな。責任重大ですね」と言った。早期表明の熱意が、「縁」につながれば最高だ。【前田祐輔】

 ◆各球団のドラフト動向

 これまで1位指名予定の選手を公表しているのは巨人、阪神、オリックスで、ヤクルトは4球団目となる。巨人は最速157キロ右腕の東海大・菅野智之投手、阪神とオリックスは藤浪の指名を明言。このほか、東都リーグ通算35勝の亜大・東浜巨投手、160キロ右腕の花巻東・大谷翔平投手が重複指名候補とみられる。155キロ右腕の慶大・福谷浩司投手、148キロ左腕の東福岡・森雄大投手、「坂本2世」の呼び声高い光星学院・北條史也内野手らも1位指名の可能性が高い。