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勝敗を分けた延長戦

ボテボテ内野安打 執念でもぎ取った1点

10回裏楽天2死二、三塁、サヨナラの三塁内野安打で一塁に駆け込む岡島豪郎
10回裏楽天2死二、三塁、サヨナラの三塁内野安打で一塁に駆け込む岡島豪郎

 2年前のことでも、楽天岡島豪郎外野手(24)の記憶は、はっきりしていた。「鮮明に覚えていますね」。12年8月26日の日本ハム戦(Kスタ宮城)。0-0のまま、延長10回裏の攻撃を迎えた。「2死二、三塁でしたね。フルカウントまでいって、四球でもいいと思いました。ベンチ前で田中さんがキャッチボールを始めていて。ああ、田中さんは次の回も投げるつもりなんだ。そう思いましたね。そこまで、3安打に抑えていました」。今はチームを離れ、ヤンキースに移籍した先輩投手の名を、懐かしそうに口にした。

 現在は外野手に転向した岡島だが、当時は捕手登録。打って、守れる捕手の本領を発揮した打席だった。「投手はモルケン。インコースの真っすぐを振ったら、バットが折れたんです。ボテボテの三ゴロ。くしゃくしゃとした当たりでした」。50メートル走6秒1の足で駆けた。一塁塁審の両腕は、目いっぱい左右に広がった。その間、三塁走者が本塁を走り抜けていた。

記録ずくめのプロ初サヨナラ打

サヨナラ勝ちに両手を挙げて喜ぶ田中将大
サヨナラ勝ちに両手を挙げて喜ぶ田中将大

 新人が1-0のサヨナラ安打を放ったのは、66年9月13日佐野(広島)が巨人戦で記録して以来、46年ぶり。チームにも、球団史上3度目となる2試合連続サヨナラ勝ちをもたらした。さらに、星野監督に監督通算1034勝目を贈った。長嶋監督(巨人)と並ぶ歴代11位となる白星だった。

  後から見れば、そんな記録ずくめの安打となったが、打った本人は必死なだけだった。プロ初のサヨナラ打にも「別に、ヒーローになろうなんて気持ちはなかったですね。自分が打ったら決まるぞ、とも思わなかった。とにかく、必死。打った後も、勝てて良かったというだけでした」。ただ、こう付け足した。「今思えば、自分らしい安打だったなと。翌年(13年)は、ボテボテでもセーフになるという当たりが増えましたから。あのサヨナラ打は、その後の僕だったんですね」。思い切りの良さと、しぶとさを併せ持つ打撃が売り。新人の年に、「岡島豪郎」を象徴する安打を打っていた。

 昨季途中から外野の一角をつかみ取った。3年目を迎え、登録も外野手に変更された。定位置争いのライバルは多いが、首位打者を目標にしている。そんな岡島にとって、サヨナラ打の魅力とは何なのか。

 岡島 ひっくり返す一打。野球の魅力ですね。何点差あっても、最後の最後まで分からない。僕は試合終了まで諦めません。そういう気持ちでやっています。

 熱っぽく話した。日本一連覇を目指す今季も、1番打者を任される可能性は高い。ネバーギブアップの切り込み隊長が、打線を引っ張っていく。【古川真弥】

松井裕のローテ入りで先発投手陣は盤石

オープン戦で力投する松井裕樹
オープン戦で力投する松井裕樹

 連覇の第1のカギは、ヤンキースに移籍した田中の穴をどこまで埋められるかにかかっている。昨季、田中がつくった貯金24(24勝0敗)を1人でカバーするのは極めて難しい。まずは、現有戦力の底上げが求められる。幸い、先発のコマはある。昨季はフルに投げられなかった美馬、辛島、肩痛から復帰の塩見、2年目の森らの上積みに期待したい。ドラフト1位の松井裕も楽しみ。オープン戦で好投を続け、開幕ローテ入りを決めた。甲子園を沸かせた高卒ルーキーは話題性もあり、田中の後継者になる可能性はある。

 打線は4番ジョーンズが健在で、柱は定まっている。問題は5番打者だ。退団したマギーの後釜として、ユーキリスが加わった。メジャーの実績は十分だが、腰に不安を抱えている。一方で、西田、榎本ら、売り出し中の若手がどこまで出てくるかも注目したい。

楽天担当記者

古川真弥(ふるかわ・まさや)
古川真弥(ふるかわ・まさや)
 06年入社。野球部に配属され、アマチュア野球、横浜、巨人を担当。10年秋より楽天。一番の思い出は、昨年の日本一を取材できたこと。星野監督と同じく、4年目を迎えた。常勝軍団となる過程を追いたい。


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