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勝敗を分けた延長戦

史上初の延長戦完全試合へ挑んだ西口

苦笑いを浮かべながらお立ち台から降りる西口文也(右)。左はサヨナラ打の石井義人
苦笑いを浮かべながらお立ち台から降りる西口文也(右)。左はサヨナラ打の石井義人

 バックスクリーンのスコアボードに17個「0」がきれいに並んだ。西武西口、楽天一場の両先発の快投が続く。2005年8月27日の西武ドーム。ハーラートップを走るソフトバンク杉内の16勝まであと1勝に迫る西口が、大記録にも手をかけていた。9回まで打者27人に完全投球。ベンチに座って味方の援護を祈るような気持ちで待った。

 快挙への挑戦は3度目だった。2度のノーヒットノーラン挑戦は9回2死から痛打されていただけに「正直、9回ツーアウトを取ったとき、ホームランを打たれるかと思ったんだけどね」と振り返ったが、見事遊ゴロに打ち取った。普通ならこれで堂々の完全試合達成もスコアは両者1歩も譲らず0―0。最終回の味方の得点が快挙達成の条件だった。

 9回裏。7番中島が右飛、8番細川が三ゴロに倒れ2死となる。9番高木浩が右前打で出塁。すかさず伊東監督は代走片岡を送り出す。1番栗山が四球を選びチャンスが拡大。一打サヨナラの好機に球場のボルテージは最高潮に達する。しかし、赤田は遊ゴロに倒れ、スコアボードに18個目の「0」が点灯した。

 延長10回表のマウンドにも、そのまま西口が向かう。伊東監督は「交代は本人が納得しないし、そんな気はなかった」と続投に一切の迷いはなかった。史上初となる延長戦での完全試合への挑戦が始まった。

 だが、その挑戦はあっけなく終わってしまった。先頭の沖原に投げたカウント2ボール2ストライクからの5球目。この試合124球目だった。130キロのスライダーをライト前に打ち返された。「今日は立ち上がりから調子がよくなかった。とにかく変化球を低めに集めることを心掛けたのが、よかったんじゃないかな」。ここまで自らを救ってくれていた決め球を打たれた。快挙は逃したが、この回も西口が19個目の「0」を加えた。

張り詰めた緊張感が生んだピッチング

完全試合を惜しくも達成できなかった西口文也(左)の手を高々と掲げる伊東勤監督
完全試合を惜しくも達成できなかった西口文也(左)の手を高々と掲げる伊東勤監督

 10回裏。石井義のサヨナラ打で勝負は決着した。劇的なサヨナラ勝ちもうれしいはずの完封勝利もどことなく物足りなさが残った。だが、西口本人は大はしゃぎするナインの輪の中に埋もれていた。「いやいや、まぁ、チームが勝ったんで。僕には縁がないんでしょう」。ひょうひょうとした口ぶりはいつもと同じでも、少しだけ浮かんだ苦笑いに、大記録を逃した悔しさがにじんでいた。

 援護が1点でもあれば…。そんな周囲の同情を西口は一蹴した。0―0の均衡が続き「その緊張感がなければ、あんなピッチングはできていなかったよ。ノーヒットノーランを続けていた試合は勝っていた試合だったし、感覚も違ったね。いつも通り。今日は完封だからね」と、打線を責めることなく、自身3年ぶりの完封勝利に価値を見いだした。

 延長でノーヒットを逃しながら勝利投手は43年真田(朝日)90年渡辺久(西武)に次いで3人目。渡辺久は最後リリーフが出ており、完封は真田に次いで2人目で、延長戦でノーヒットノーランを達成したのは73年8月30日江夏(阪神=延長11回)だけ。歴史的大記録達成は逃したが、最後に味方打線がともした「1」が西口の疲労感を吹き飛ばした。【為田聡史】

中村復帰までL打線を牽引する浅村

豪快な本塁打を放ち、バットを放り投げる浅村栄斗
豪快な本塁打を放ち、バットを放り投げる浅村栄斗

 伊原ライオンズ第2章の幕開け。03年以来2度目となる伊原春樹監督(65)が指揮を執る。注目は二塁にコンバートされた浅村だ。昨季は110打点で打点王に輝いた売り出し中の長距打者が、新境地でさらなるスケールアップを目指す。主砲の中村は脇腹痛などで開幕こそは出遅れたが、復帰までにそれほど長い時間はかからない。西武が誇る2人の大砲が打線の枢軸を担う。

 投手は岸、牧田を筆頭に野上、菊池らが先発ローテに名を連ねる。昨年はシーズン途中で左肩痛で離脱しながらも自己最多の9勝をマークした菊池の飛躍に期待。ブルペンは新守護神に抜てきされた十亀、セットアッパーには2年目左腕の高橋、新外国人のボウデンらが勝利の方程式を形成する。昨季はスタートダッシュに成功し、一時、失速するも終盤戦で再び驚異的な戦いぶりを発揮し、2位まで浮上。6年ぶりの王座奪還に狙う。

西武担当記者

為田聡史(ためだ・さとし)
為田聡史(ためだ・さとし)
 1982年(昭57)5月17日、大阪府岸和田市生まれ。静岡・清水商(現清水桜が丘)-法大を経て05年に入社し、写真部に配属。09年に静岡支局に転勤し、サッカーを担当。12年から巨人担当、14年1月から西武担当。


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