第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表候補の日本ハム中田翔内野手(23)が7日、沖縄・名護で行われた紅白戦で、第1打席の初球を本塁打。12球団を見渡しても今年“第1号”となるアーチを右翼席へたたき込んだ。早いカウントからバットを振り、逆方向へ。WBCを戦う上で、代表チームにとって有利となる“侍仕様”の打撃で、最終メンバー入りへ猛アピールした。

 右翼方向へ高々とあがった打球が、外野の芝生席で軽やかに跳ねた。白組の4番として、今年最初の実戦で迎えた第1打席。2013年の第1球、3年目左腕・斉藤の外角の直球を最初のスイングで仕留めてみせた。

 中田

 積極的に甘いボールを打ちに行けたのが良かった。風があったから何とも言えないけど、外角高めの球をしっかりとおっつけられたのが良かった。しっかりと振り切った中で打てたし、感触も良かった。

 今キャンプでは、軸足回転を意識して打撃練習を行ってきた。軸となる右足にぎりぎりまで体重を残して、くるりと回転する。自然と、左足があがる“1本足打法”になった。さらに、右ひざが前に突っ込む癖を修正しようと、フォーム固めに必死だ。

 中田

 前に突っ込んでいたら、打てないコースだからね。今までなら手が止まっていた。右に(体重が)残っていたから、あそこへ打てたと思う。フリー打撃でも、今年は逆方向へ強いボールが打てているなと思う。

 自身の課題と向き合った結果、自然と国際舞台で戦う上で有利となる打撃法につながった。球数制限のあるWBCで、投手は積極的にストライクを取りに来る。ファーストストライクを恐れずに振り、甘い球を逃さない打者は、相手投手にとって脅威となるはずだ。さらに決勝ラウンドが行われる米サンフランシスコのAT&Tパークは、右中間が異常に深い独特の構造を持つ。右方向へ長打を打つ技術を持った右打者は、WBC3連覇を目指す侍ジャパンにとって、大きな助けとなるに違いない。

 この日、120メートル弾を含む4打数2安打も「2打席目は甘い変化球に腰が引けたスイングになってしまった。あれを1球で仕留めないといけない。ああいうところが、まだまだ」と、遊ゴロに終わった第2打席を反省した。試合後、信頼を寄せる稲葉にも「本物じゃない。だまされないよ」と諭され、さらに気が引き締まった。中田が目指す打撃は、まだ道半ば。日本代表として世界の舞台で戦う時まで、理想を求めて技術を磨き続ける。【中島宙恵】

 ◆中田の右方向への本塁打

 プロ通算51本のうち84%の43本が左中間を含む左方向への1発。右方向へ流した本塁打は11年5月7日ソフトバンク戦、同7月26日オリックス戦、12年6月27日楽天戦の3本だけ。11年オリックス戦は地方の帯広、12年楽天戦は東京ドームで記録しており、広い札幌ドームでは全25本のうち右方向は11年ソフトバンク戦の1本(杉内から)しかない。

 ◆AT&Tパーク

 WBCの準決勝、決勝の会場AT&Tパーク(米サンフランシスコ)は中堅から右翼にかけての形状に特徴がある。メジャーで最も本塁打が出にくい球場の1つで、右翼ポールまで94・2メートルと短いが高さ25フィート(約7・6メートル)のフェンスが中堅までを覆い、後方の入り江からは逆風が吹く。右打者が流してスタンドインさせるのは難しく、開場以来13年間で25本塁打しか出ていない。海に飛び込む130メートル級の名物弾「スプラッシュ・ヒット」87本はすべて左打者によるものだ。

 右中間付近には「デスバレー(死の谷)」の異名を取る外野手泣かせのフェンスが存在する。鋭角に折れ曲がる部分があり、ここに当たるとクッションボールが不規則になる。イチローは07年球宴で二塁打性の打球を当てて、球宴史上初のランニング本塁打でMVPを獲得した。