侍ジャパンの西武牧田に新たな魔球? 宮崎・南郷でのキャンプ第3クール3日目の12日、シート打撃で今年初の実戦形式での投球。打者12人と対戦し5安打を許したが、その中でもあるボールが目を引いた。

 7人目の中田への第3球。外角低めへのカーブはいつにも増して遅く、泳がせて二ゴロに打ち取った。スピードガンの表示は84キロ。「WBC公式球だからですかね。投げ方を変えているわけでも、意図して遅くしているわけでもないんですが」と話したが、打った中田は「確かに遅かった。海外の打者には有効かもしれませんね」と証言した。

 直球の最速は124キロとほぼ普段通り。緩急差は40キロに達した。中田は「自分には直球が来なかったので、なんとかバットに当てられたけど、直球を見せられた後だと厳しい」と言う。意図せぬ副産物とはいえ、常識外れの遅球は、速球に強い海外の強打者こそかく乱する効果が期待できる。

 牧田は「今日はほとんど打たれた感じになりましたけど、打たれた球、抑えた球がはっきりしていたので、修正はしやすい。考えて次に進みたい」と今季初の実戦形式をあくまで調整のステップととらえる。“魔遅球”についても「本当に通用するかどうかは分かりません。相手もいることですし、実際に大会で投げてみないと」と慎重だ。

 それでも「80キロ台のボールが来るかもしれない」という情報自体、相手を惑わせる材料になる。124キロと84キロのボールは、本塁上では実に6・08メートルもの距離差を生む。WBC球への対応の副産物は、小久保ジャパンの大きな武器になるかもしれない。【塩畑大輔】