心強い救世主が合流した。嶋基宏捕手(32)の離脱を受け、緊急招集された炭谷銀仁朗捕手(29)が4日、大阪市内のチーム宿舎に合流した。13年の第3回WBCでも3試合でマスクをかぶった経験を持つ、球界屈指の捕手が守備力に不安を露呈している侍ジャパンに加わった。本番前のラストマッチとなる今日5日のオリックス戦(京セラドーム大阪)にさっそく出場する予定。急きょ合流も落ち着いた振る舞いを貫く炭谷ならきっと日本を救ってくれる。背番号は9番に決まった。

 黒塗りのタクシーから落ち着いた表情で炭谷が降車した。待ち構える報道陣には目もくれずホテルのロビーへと進む。エレベーターホール前で立ち止まって取材に応じ「もう日にちもないし、どうこう言ってられない。やるだけだと思っています」と淡々と話した。前日3日に正式な連絡を受けて緊急参戦する運びとなった。前回大会も知る経験豊富な捕手だけにどっしりと侍ジャパンのピンチを受け止める覚悟を示した。

 土壇場での追加招集となったが元来、捕手としての経験値は現役捕手屈指だ。プロ11年間で1018試合に出場。大野の590試合、小林の262試合を大きく上回る。当然ながら国際舞台も同様。昨年11月の強化試合には参加しておらず、WBC球への対応が心配されるが「前回(のWBC)は問題なかった。今回は久々なんですが、元々そんなボール気にするタイプではない」ときっぱり。一切の不安を口にしなかった。

 短期決戦で勝負を決める国際大会の妙も心得ている。「投手の状態がいい、悪いで左右されていたら通用しない。仮に調子が悪いとしたら、その中で捕手として何が出来るか。一番はコミュニケーションだと思う」と説明した。今回13人の投手陣のうち、初めて受ける投手は平野、岡田、藤浪、千賀の4投手。「最近の試合はテレビで見ていた。シーズン中も含めてイメージはあるので大丈夫だと思います」と培ってきた捕球技術と配球でリードには問題がないとした。

 本番までの時間はないに等しい。だが、その中で最善を探る以外の方法はない。小久保監督からはシンプルに「頼むぞ」と伝えられ「まだはっきりとは聞いていないけど、監督から電話受けたときに5日も出るような準備はしておいてくれ、と言われた」。今日5日のオリックス戦でマスクをかぶる可能性が高い。「チームが勝つために、自分ができることをやるだけ。だって、それしかできないでしょ。頑張ります」と男らしく締めた。【為田聡史】