WBA世界スーパーバンタム級9位の久保隼(26=真正)が、世界に初挑戦する。4月9日に、エディオンアリーナ大阪で同級王者ネオマール・セルメニョ(37=ベネズエラ)に挑むことになった。

 真正ジムの先輩には、同じサウスポー、同じ階級で王者になり、昨年現役を引退した長谷川穂積氏がいる。身近な兄貴分から、久保はいくつもの助言を受けてきた。「頑張ってる選手には、いずれチャンスがやってくる」と言われ続けて練習に励んできた。12回までもつれた末に何とか初防衛した昨年5月の東洋太平洋タイトルマッチ後は「世界戦までに12回を経験できて良かったんや」と言われ、気持ちを切り替えることもできた。「長谷川さんがいてくれて良かった」と久保も頭を下げる。

 そんなレジェンドの他にも、久保の周辺には豪華な先駆者がいた。同じ南京都(現京都広学館)高校の8学年先輩にはWBC世界バンタム級王者・山中慎介、5学年先輩にはミドル級で世界を目指す村田諒太がいた。久保にとって、山中は憧れの存在。「話すのも緊張します。左ストレートにこだわるところがすごい。参考にしてます」と、表情を引き締める。

 そして、村田の話になると、申し訳なさそうな表情になる。村田と同じ東洋大に進学しながら、4年時にはボクシングをやめて、迷惑をかけた思いがあるからだ。「やめて、裏切ってしまってるので…」と、それまで滑らかだった口調が、ぎこちなくなるほどだ。

 励まされてきた長谷川、憧れの山中、そして最も学年が近く高校、大学と同じ道を進みながら、気まずい思いをさせてしまった村田。それぞれの先輩に恩返しをするためにも、巡ってきたチャンスは逃さない。【木村有三】