<大相撲春場所>◇9日目◇16日◇大阪・ボディメーカーコロシアム

 元ボディービルダーの朝山端(あさやまばな、22=高砂)が新序二番出世を果たした。「力士になったんやなと実感しました」。前相撲は一番だけだったが、デッドリフト(バーベルを床から腰付近まで上げる種目)300キロを上げる怪力の片りんを見せた。

 ボディービルの筋肉は、スポーツには向かないといわれる。特に相撲は四股、すり足など普段使わない筋肉も多く、柔らかさも必要。若松親方(元幕内朝乃若)は「使う筋肉が全然違うから、少しずつしかさせられない。けがしちゃうからね」。硬くて“魅せる”筋肉は、力士としての成功へ大きな壁となりうる。

 3年前、朝山端は軽トラックにはねられた。意識不明、全身打撲、首のむち打ち、髄膜炎で集中治療室に緊急入院。それでも驚異的な回復で通常2、3カ月のところを1カ月で退院し、その足でジムに向かった。困難を乗り越えるための努力は人一倍。「ボディービルの筋肉は(相撲で)使われへん、と思われるのは嫌」。仲間の思いも背負う。

 1日にジムの関係者60人が集まって行われた送別会では「強くなるまで帰ってきません」と宣言した。相撲は未経験。異端児の挑戦が、いよいよ始まる。【桑原亮】