プレーバック日刊スポーツ! 過去の8月13日付紙面を振り返ります。2013年の1面(東京版)は初回に左1発でKO勝ちし、日本人最強を見せつけたWBC世界バンタム級王者の山中慎介でした。
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<プロボクシング:WBC世界バンタム級タイトルマッチ>◇2013年8月12日◇東京・大田区総合体育館◇観衆4000人
WBC世界バンタム級王者の山中慎介(30=帝拳)が、初回に左1発で決めた。同級8位ホセ・ニエベス(32=プエルトリコ)を迎え撃ち、2分すぎに左ストレートを打ち込んで吹っ飛ばした。1回2分40秒KOで4度目の防衛に成功。日本人の世界戦では10度目の初回決着で、3連続KO防衛は歴代5位タイとなった。左の強打に切れを増し、観戦のWBO王者亀田和毅(22)にも日本人最強を見せつけた。11月にも5度目の防衛戦に臨む。
まさに山中の必殺の左1発が、初回にしてさく裂した。2分すぎ、軽い右ボディーからの左ストレートが、顔面をとらえた。ニエベスは青コーナーに吹っ飛び、そのままへたり込んで10カウント。「脇が空いて手応えはもうひとつ」でも、鮮やかすぎる初回KO防衛となった。
日本人の世界戦勝利では10度目の1回KO勝ち。8番目のスピード決着に「不完全燃焼。正直もう少しやりたかった」。カウントを聞く間も「立ってきて!」と願った。ぜいたくな不満だが、左のすごさを見せつけるには十分だった。
本人は「早くて中盤KO」と予想していた。過去3回の防衛戦は、いずれも元世界王者。今回はいざリングで向かい合うと「実力差を感じた」と振り返る。ジャブで様子を見ながら、ロープに詰めての連打から左を当てた。「1発入れたら弱気な顔で嫌がっていた」。のまれた相手はすでに腰が引けていた。
箔(はく)を付けるKOにもなった。日本人世界王者として、3連続KO防衛でハードパンチャーのトップ5入り。ジムの大先輩大場ら6人を抜き、日本拳法出身の渡辺に並んだ。1つの壁を突破し、一流の強打者の仲間入りとなった。
強打を示すデータはまだある。日本のジム所属王者で4度防衛は、山中がのべ26人目となる。上には上がいるが、世界戦5勝4KOでKO率は80%。過去25人の中でこれを上回るのは、8勝7KOで87・5%の内山しかいない。
4団体のバンタム級王者は日本人3人で、WBO王者亀田和が観戦した。格の違いで日本最強を示し、リング上から「ぜひ統一戦やって盛り上げましょう」と新米王者に余裕のエールだ。控室では「WBOにこだわりはない。盛り上がれば誰でも。一番やりたいのはモレノ」と言った。モレノは11度防衛中のパナマ人のWBAスーパー王者。最強への歩みは止まらない。
過去2試合で引き分けもある、苦手な夏を乗り越えた。「また1つ自信になった」。11月にも大場に並ぶV5戦で、故郷滋賀など関西圏が有力な凱旋(がいせん)試合を計画する。「もらったのは軽い1発だけ。拳に痛みもない」と、早くも今年3試合目に照準を切り替えた。
◆山中慎介(やまなか・しんすけ)1982年(昭57)10月11日、滋賀・湖南市生まれ。南京都高3年の国体で習志野高1年の粟生を破って優勝。専大では主将。06年1月に6回判定勝ちでプロデビュー。10年6月に日本バンタム級王座獲得、防衛1回。11年11月にWBC世界同級王座決定戦に勝利で王座獲得。171センチの左ボクサーファイター。家族は夫人と1男。
<惨敗ニエベス、パンチ見えなかった>
山中に敗れたニエベスは、王者のスピードに脱帽した。「いいパンチだったから倒れたんだと思う。最後のパンチは見えなかった。急に打たれた感じだった」と、ぼうぜんとした表情で話した。右目は赤く染まっており「非常に残念で悲しい。タイトルを持たないでプエルトリコに帰るなんて。どうしていいか分からない」と、惨敗のショックは大きかった。
<観戦亀田和毅は余裕>
リングサイドで観戦したWBO王者の亀田和は、試合後の山中の言葉を聞く前に足早に会場を離れた。それでも、3試合連続KOを見せつけられた試合を穏やかな表情で「素晴らしい試合やったんやないですか」とたたえた。山中との統一戦を望む声が上がる中、それを問われると「うん」とにやり。「実現できたらね、面白いんじゃないですか」と余裕を見せながら、帰りの車に乗り込んだ。
※記録と表記は当時のもの

