WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)が、ねばねばパワーで真夏のV3戦を乗り越える。同級1位ペッチバンボーンとの3度目の防衛戦(4日、神奈川・スカイアリーナ座間)に向け2日、都内で行われた調印式に出席。夏ばて防止と減量対策として、苦手だった納豆やオクラを具材とした「ねばとろ丼」を取り入れてきた。万全の仕上がりに、KO防衛にも意欲を示した。

 調印後、試合で使用する白のグローブに拳を入れると、井上の表情が引き締まった。減量の最後の追い込みに入っているとは思えないほど肌つやも良く、会見では仕上がりの良さを強調。2試合ぶりのKOへの思いを聞かれると「プロとしてやっている以上は、毎回それは考えている。流れがくればもちろん狙っていく」と口調を強めて言った。

 疲労がたまりやすい真夏の調整とあり、食事面の改善にも取り組んできた。以前は好物の肉が中心だったが、咲弥夫人が疲労回復と減量に効果的な「ねばとろ丼」を考案。ご飯の上にトロ、オクラ、イカ、山芋、納豆、卵、たくあんを乗せたもので、週4回は食べるように心がけた。

 井上が栄養サポート契約をする明治の管理栄養士・岩切佳子さんは「トロにはスタミナに関わる鉄分、イカには疲労回復効果のあるタウリン、オクラなどのネバネバ成分にはコレステロール値を下げる働きがあり、減量にも最適です」とメニューを絶賛。井上も「ネバネバ系は苦手だったが、食べ続けているうちに効果を感じた。満腹感もあるし、すごく気に入った」と手応えを口にした。

 3試合連続のランキング1位挑戦者との一戦に向け、「相手に何もさせない」をテーマに掲げた。序盤はスピードで圧倒し、挑戦者の足が止まればボディーから崩していく。相手が不用意に出てきたらカウンターで仕留める。「あり地獄のように相手の心と体を少しずつ追い詰めたい。完璧な内容での勝利を目指している」と意気込みを語った。

 会見後、大橋会長は「ベテラン王者のような風格を感じる。いけるなら1回に倒しにいってもいい」と早期決着にもゴーサインを出した。心身充実の「怪物」が、隙のない試合でさらなる進化を証明する。【奥山将志】