WBC王座に挑んだ拳四朗(25=BMB)が、王者ガニガン・ロペス(35=メキシコ)に2-0判定勝ち。重量級の元日本、東洋太平洋王者の父、寺地永会長(53)に導かれ、プロ10戦目で頂点に立った。

 拳四朗の「百烈拳」がロペスのボディーを襲う。最終12ラウンド。体を丸め、もたれかかってくる王者に20発以上たたき込んだ。「楽しかった。あんな出し切ったんは初めてやったんで。“やってるね~”って感じで」。ベルトを受け取ると真っ先に、世界王者になれなかった父、寺地会長の腰に巻いた。「決めてたんで」と喜んだ。

 漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名されたが、対極にあるベビーフェース。「パパのために勝ちたかった。親孝行したかった」。ジムでも「会長」とは呼ばず「パパ。それで育ったんで」。プロデビュー前から行うジム近くにある大吉山でのトレーニング。ワニ歩き、犬走り、丸太転がしで標高約100メートルを駆け上がる時もマンツーマン。まさに“一子相伝”で、一緒にこなしてくれた。

 闘争本能を満たすため、最強の称号を手に入れたいわけじゃない。「お金を稼ぎたいんです。将来をゆっくり過ごしたいから」。ボートレーサーになる試験に高校、大学と2度落ちた。今でも「ボートレースの方がいい。選手寿命長いし、稼げますよね」と残念そうだ。

 スイッチは「北斗の拳」の主題歌「愛をとりもどせ!!」が入場曲でかかって初めて入る。「怒ること? ないですねえ。疲れるじゃないですか? それが嫌なんですよ」と笑う。京都で生まれ、元日本ミドル級、東洋太平洋ライトヘビー級王者の父に導かれ、世界を手に入れた。いつも笑みを絶やさぬ“古都の拳”の伝承者はスマイル・アサシン(笑顔の殺し屋)として、もっと強くなる。【加藤裕一】