「格闘家石井」が「武蔵流」で世界最強を目指す。北京五輪柔道100キロ超級金メダリストで総合格闘家に転身した石井慧(22)が18日、都内で会見。前日17日にブラジル、米国での武者修行から帰国し、この日は出発した3月4日以来約2カ月ぶりに公の場に姿を現した。修行の成果を口にし「宮本武蔵のように師は持たないと決めた」と、今後はロシアやオランダでの修行を希望。最強を目指して剣の道に生きた武蔵のように、年内の総合格闘家デビューを目指して、世界各地で自分を磨く覚悟を見せた。

 石井が「武蔵流」を宣言した。「柔道をやめるころに、川野先生に『野武士みたいだから、師を持たない方がいいかも知れないよ』って言われたんです。(ブラジルに行き)僕も宮本武蔵のように師は持たないと決めた」。国士舘高柔道部時代に総監督だった川野一成先生(65)にもらった言葉を用い、最強を目指し修行に打ち込んだ剣豪に倣う覚悟を見せた。

 この2カ月間で手応えを得たからこその発言だ。ブラジルでは米国総合格闘技団体UFCで6戦無敗のLYOTO(リョート・マチダ)の父の道場で週6日、総合格闘技の練習に明け暮れた。「UFC98」(日本時間24日、米ラスベガス)で同ライトヘビー級王座戦に挑むLYOTOとは何度もスパーリングし、ハイキックを食らってあごが外れたことも。「打撃面で歯が立たなかった。(自分は)強くなっているのかなって感じだった」。

 そんな気持ちが、帰国前に立ち寄った米ニューヨークでの2日間で一変した。ヘンゾ・グレイシーのジムで練習して「パンチを目で見られるようになったし、怖くなかった。自信がついた」。成長を確信。1カ所にとどまらず、孤独と戦いながらも異なる「修行の場」を回ることで、進化する自分に気が付いた。

 約1カ月間予定の日本滞在中は「レスリングの練習に行きたい」と、日体大レスリング部への出げいこ案を口にした。その後は「ロシアかオランダに行きたい」とブラジル、米国に続く海外武者修行を望む。

 昨年の北京五輪後、UFC入りを目指して格闘家に転身した。UFCとは同12月に独占交渉契約したが、期限は1月に終了。現在は他団体の話も聞いている状況だ。石井は「(目標は)変わっていない。今年中にデビューしたい」と話す。「いろんな所へ行って、格闘技の強さ、人間の幅が広がった」。世界最強を目指し、今後も世界を飛び回るつもりだ。【浜本卓也】