WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(29=真正)が史上3人目の偉業に挑む。18日の10度目の防衛戦(神戸ワールド記念ホール)を前に、29歳の誕生日となった16日は神戸市内で調印式が行われた。挑戦者ペレス(27=ニカラグア)に記念日を祝福されながら、V8マリンガ戦から続く「1回KO」に意欲。3試合連続1回KOは過去にジョー・ルイス、ジェラルド・マクラレン(ともに米国)しかおらず、ボクシング史に名を残す戦いとなる。

 年に1度の記念日に、長谷川が「世界記録」宣言だ。会見で壇上から「1ラウンドで2試合続けてKOしている。1ラウンド目は、もちろん狙っていきたい」と言い切った。この日が29歳の誕生日。その目は横にいた挑戦者ではなく、歴史的記録に向いていた。

 3月のV8マリンガ戦は157秒、続くロチャ戦は148秒で決着をつけた。世界戦で2度の1回KOは日本人初。それが「3試合連続」となると、世界で2人しか成し遂げていない。前人未到の25連続防衛したルイス(38年6月~39年4月)と、90年代前半に活躍したマクラレン(93年8月~94年5月)。高いKO率を誇った2人に肩を並べる好機。「KOは運ですから」と言いながら「できれば、まぐれを狙っていきたい」と意欲を見せた。

 準備は万全だ。調印式後は所属ジムの山下会長を相手に4回のミット打ち。試合前のジムワークを打ち上げた。「やることはやった。これ以上やることない」。これまで以上に下半身をいじめ抜いた「2ケタ防衛への道」に、山下会長も「脂の乗った長谷川穂積のボクシングを見せることができる」と目を細めた。

 誕生日と聞いたペレスには「おめでとうございます、と申し上げさせてもらいたいのですが、タイトルは持って帰ります」と祝福?

 された。減量と闘った末の計量前日。「この先、こんなに食べられない誕生日は一生ないと思う。自分へのご褒美に勝ちたい」。長谷川が、世界記録でV10に花を添える。【近間康隆】