吉田秀彦(40=吉田道場)がラストマッチで一番弟子に格闘魂を継承する。4月25日に東京・日本武道館で行われる「吉田秀彦引退興行~ASTRA」の全カードが1日に発表され、中村和裕(31=吉田道場)との同門対決が決定した。会見に臨んだ吉田は「ボクの持っているものを渡す意味で」と、後を託す中村に魂も注入することを宣言。また対戦相手の最有力候補だったエメリヤーエンコ・ヒョードル(33=ロシア)との対戦交渉が不調に終わったことも明かした。

 ラスト舞台は禁断の同門対決を選んだ。都内のホテルで行われた記者会見で吉田は、一番弟子と同じ壇上に座った。緊張の面持ちの中村を横目によどみない口調で決意を表明した。

 吉田

 最後はカズ(中村)ということで、自分としてはやりづらいが、ここで負けるわけにはいかない。私情抜きでガチンコでやりたい。いい試合をやるのは間違いないと約束する。ここで引退するので(中村に)ボクの持っているすべてを渡す意味でもいいなあと思う。

 吉田の対戦相手の最有力候補は旧PRIDEヘビー級王者ヒョードルだった。当初は先月24日に予定していたカード発表を遅らせ、ヒョードル側と交渉を続けた。ファイトマネーなど条件面で合意したが、最後は右拳の故障、相手側の米国の試合契約がネックとなり先月31日に断念。夢対決は実現しなかった吉田だが、日本人ならば第1候補は中村だったことを明かした。

 吉田

 できればヒョードルとやりたかったが、できなかったので仕方ない。なので発表が長引いたが(ヒョードルが)検討してくれたのはありがたい。ヒョードルでないなら、日本人ではカズしかいなかった。

 師匠の胸中を知った中村は神妙な表情で反応した。

 中村

 吉田さんは大きな壁。知名度、実力ともに乗り越える機会はないと思っていた。今から口をきかないぐらいの気持ちでいきたい。勝ちにいきます。

 02年から常に一緒の道場で練習してきた2人。肉体と拳をぶつけ合ってきた師弟が、試合決定を契機に離れる。吉田が元総合格闘家の高阪剛氏の道場に出げいこに出るため、ほとんど顔を合わせずに試合当日を迎える。「カズがピリピリムード。ボクもそうしてもらった方がやりやすい」と吉田。師匠から弟子へ、柔道王が8年間の総合格闘技人生の集大成をファイトで伝承する。【藤中栄二】