WBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志(32=ワタナベ)が、11カ月間のブランクを支えた写真を目に焼き付けて大一番に臨む。今日31日、横浜文化体育館でWBAダブル世界戦(日刊スポーツ後援)が開催。暫定王者・ホルヘ・ソリス(32=メキシコ)との王座統一戦を控えた30日に計量に臨み、58・9キロでクリアした。今年1月に脱臼した右手のエックス線写真を見つめ、我慢した離脱期間を振り返って気持ちを高揚させた。

 複雑な思いがこみ上げた。WBAベルトを肩に乗せた正規王者の内山の目前に同じベルトを持つ暫定王者のソリスがいた。「実績は向こうが上ですが、目の前にベルトがあるのが変な感じ。同じベルトは減らしたい」。内山は11カ月間、温存してきた右拳を強く握ってみせた。

 右拳のエックス線写真が、内山の携帯電話に保存されている。今年1月の三浦隆司との3度目の防衛戦で負った右手根骨と中手骨が脱臼した時、病院で撮影された。完全に骨がずれている衝撃的なショットを「時々、見てきました」と眺めて、自らを鼓舞させてきた。右拳を使いたくても使えない。そんな苦しい時期を支えた写真だった。あらためて試合前に眺め「11カ月ぶりの試合。今までためてきたものを爆発させたい」と集中力を高めた。

 夕食には縁起を担ぎ、試合前日に食べている特上のうなぎを用意し、炊きたてのコシヒカリに乗せて口にした。ゴング時間は午後10時30分。11年の日本ボクシング界を飾る最後の世界戦だ。内山は「最後の最後。ボクシングを初めてテレビで見る人もいると思う。少しでも良い試合をして勝つ」と締めくくった。我慢と忍耐で治した右拳に願いを託し、KOダイナマイトが出陣する。【藤中栄二】