企業再生支援会社スピードパートナーズが、全日本プロレスを完全買収したことが25日、明らかになった。実質オーナーとなる同社の白石伸生社長(40)が、昨年11月1日に全日本の株式を100%取得。同氏は業界トップの新日本プロレスに「1年で追いつく」と宣戦布告。3年後に4大ドームツアーの実施をぶち上げた。

 白石社長は、昨年11月1日に全日本から全株を取得した。同時に、資本金1億円で全日本プロレス、全日本システムズという2つの会社を設立。新役員として三坂輝代表取締役副社長(42)を送り込んだ。全日本買収の理由を「新日本と全日本の差がつきつつあった。私が資金面、財務面をサポートし、中小企業から業界のリーディングカンパニーにする」と、説明した。

 もともとプロレスファンで、過去に新日本プロレスの東京ドーム大会をスポンサーとして支援したこともある。新日本の木谷高明会長とは20年来の友人で、今回の買収についても昨年末にあいさつし伝えたという。友人でも当面のライバルは業界1位の新日本。「人間の限界値を見せるプロレスを目指す」と目標を掲げ「(売り上げは)1年で追いつく。3年後に4大ドームツアーを実現させる」と自信たっぷりに話した。

 大きな目標を掲げるだけに、現場には金も口も出す。選手に「痛みや激しさの伝わるプロレス」を求める代わりに、マットや場外の安全対策に3000万~4000万円を支出。さらに選手には、近藤修司(35)にヘビー級転向を命じるなど、個別に課題を与え「フリーの選手もちゃんとプロレスができない選手は契約を更新しない」と断言した。

 今年4月以降は、団体から他団体への選手の貸し出しを認めない鎖国に入る。選手を強化して、激しいプロレスの先には、総合格闘技進出のプランもある。将来的に、米国の総合格闘技団体MMAへ選手を出すプランもあるが「MMAごと買収してもいい」さらに「新日本ごと買収しても」と強気の発言を繰り返した。

 まずは、手始めに東京ドーム大会の開催を目指して動きだした。地上波テレビ局との提携の話も進めている。全日本が「武藤商店」からビッグカンパニーに生まれ変わるか。【桝田朗】

 ◆スピードパートナーズ

 ITモバイル事業や、企業再生支援などを行う。2006年5月17日に設立。資本金9000万円。従業員数はグループ全体で450人。本社は東京都中央区湊。白石伸生社長。

 ◆全日本プロレス

 1972年(昭47)10月21日、ジャイアント馬場が東京・町田市体育館で旗揚げ。ジャンボ鶴田や天龍源一郎、四天王と呼ばれた三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明ら名選手を輩出。99年にジャイアント馬場が死去し、00年にノアと分裂した。02年9月に、新日本プロレスを退団した武藤敬司が移籍し社長に就任。現在、3冠ヘビー級王者船木誠勝ら22人が所属。フリーでバーニングの秋山準らが参戦している。内田雅之社長、武藤は会長を務めている。