ボクシング亀田3兄弟の三男和毅(ともき、17=亀田ジム)が29日、成田空港での新型インフルエンザ騒動に巻き込まれた。世界保健機関(WHO)が警戒水準を引き上げて以降、メキシコから初の直行便となるアエロメヒコ58便(乗客乗員198人)に和毅も乗っていた。到着後、機内検疫でのどの痛みを訴えた乗客らが待機を強いられ一時騒然としたが、感染の疑いがある乗客乗員はいなかった。メキシコ滞在を繰り上げて帰国した和毅は「不安やった」と話した。

 飛行機到着から1時間43分後の午前8時28分、メキシコで購入した青いマスクを着用した和毅が到着ゲートに姿を見せた。待ち受けた報道陣のほとんどがマスクを着用し、こもった声の飛び交う囲み取材となった。マスク越しに「長かったなぁ」と和毅はややお疲れモード。40代の日本人男性が高熱とのどの痛みを訴えたため、和毅を含む周囲の約20人の乗客も待機させられていた。

 成田空港に到着してすぐ、口にマスク、目にゴーグルを装着した防護服姿の厚労省の検疫官7人が乗り込んできた。男性客が機内後方に案内され、簡易検査を受けた。検査は約1時間。その間、男性の近くにいた乗客には「男性がもし陽性なら詳しく調べ直します。6時間ぐらい待機していただくことになる」と説明を受けた。

 和毅は男性の前の席に座っていたようで「(機内で男性を)あんまり見ていなかった。(男性の)声とかも全然聞こえなかった。オレ、ずっと寝てたからね。わからんかった」と振り返った。しばらくして検疫官から「陰性でした」と伝えられ「いろいろ検査しとった。もうちょっと人数かけてやってほしかった。みんな疲れているからな」と和毅はようやく安心した表情を見せた。

 5月30日に試合を控えていた和毅は「不安やった。(インフルエンザに)かかっとったら、10日間、ホテルに行かなあかんかったからな」と不安だった心中をはき出した。

 マスクはメキシコで購入し、ずっと着用していたという。「むこうではこんなに騒いでない。マスクも10人に1人ぐらい」と現地の様子を話した。滞在を繰り上げたのは父史郎さん(43)の「心配やから帰ってこい」との指示だった。突然のメキシコ出国に和毅は「(帰国を)想像してなかった。想像せえへんよ」と目を丸くしてみせた。それでも愛着のあるトレーニング地に「オレ、メキシコ好きやから。それでも行きますよ」と再度のメキシコ訪問を示唆した。

 機内では防護服の検疫官が乗り込んできたことで物々しい雰囲気になったという。検疫官らに質問票を手渡されたり、サーモグラフィーで体温を調べられた。大阪府枚方市の主婦(38)は「メキシコの空港では『大丈夫?』くらいしかいわれなかったのに、日本の検疫には驚いた」と、一緒に帰国した2人の娘の顔を見て疲れ切った様子をにじませていた。