豊ノ島にとって、今年の漢字といえばこれだ。「子供の稽古の『子』。これしかないやろう、今年は」。大相撲の巡業は昨年の37日間から、今年は大幅増の62日間となった。巡業ではほぼ毎回、朝稽古や取組の間に、「子供の稽古」が設けられる。関取衆が子供たちに稽古をつけるのだが、豊ノ島はほぼ皆勤で参加した。だからこそ「子供の稽古の『子』」なのだ。

豊ノ島の1字「子」
豊ノ島の1字「子」

 子供の稽古は、単に力士が子供を鍛えるだけでなく、お客さんを意識しながら楽しませる要素も含まれる。今年は巡業日数が延びた分だけ、エンターテインメント性はどんどん洗練されていった。塩をてんこ盛りにして力士に投げ付けるのは見慣れた光景。物言いをつけ、土俵中央で協議、マイクを使って説明するくだりは豊ノ島の主導で新たに加わった。さらにそこから、阿夢露がロシア語で説明して爆笑を誘うなど、レパートリーは多彩化。秋巡業からは誉富士が彗星(すいせい)のごとく現れ、独自のパフォーマンスで注目度もうなぎ上りになった。

 巡業が増えたのは、相撲人気が復活した証し。テレビなど媒体への露出も急増した1年を、豊ノ島は「ある意味『個』を生かして、相撲も盛り上がってくれたら」と振り返った。本業では、春場所で横綱日馬富士を破り自身4度目の金星。秋場所では優勝争いに加わるなど奮闘した。長女希歩(きほ)ちゃん(3)を持つパパでもあり、来年は「子供のためにも頑張る。子供も欲しい」と、2人目の誕生をにおわせていた。【桑原亮】