大関稀勢の里(30=田子ノ浦)の綱とりが、完全に白紙に戻った。横綱鶴竜に土俵際で逆転の下手投げを食らい、土俵下に転がり落ちた。3場所連続で綱とりを続けてきたが、4場所ぶりの4敗目。八角理事長(元横綱北勝海)は「仕切り直しだよ」と、来場所にもつながることはなく、振り出しに戻る見解を示した。

 懸命につないできたかすかな希望が、完全に断ち切れた。転がり落ちた土俵下で稀勢の里は少しの間、立ち上がることができなかった。初場所以来の4敗目。八角理事長は「仕切り直しだよ。決して弱いわけじゃないが。(来場所への継続は)無理でしょう」と、3場所連続で続いた綱とりが白紙に戻る見解を示した。

 雑すぎる攻めだった。左四つとなるも、まわしを取らないで前進。腰が高く、寄りが甘い。「稽古場だと思って何も考えず、気楽に行けた」という鶴竜に、いとも簡単に投げられた。11日目の豪栄道との直接対決に負けた時点で心の糸が切れ、再びつむぐには時間が短すぎた。理事長は「集中力という点で、精神的に整理できていない気がする。ずっと綱とりと言われて、精神的な疲れもあったのでは。(中途半端に続くよりも)リセットでいいんじゃないのか」と思いやった。

 稀勢の里自身、ため息交じりに「まだまだだね」と“終戦”を受け止めた。最も横綱に近いと言われながら遠い賜杯。豪栄道が初優勝すれば横綱、大関でただ1人、優勝を経験していなくなる。立て直していけるかと問われると「やるしかない」と、言葉を懸命にしぼり出した。【今村健人】