【アトランタ支局22日】柔道男子86キロ級・吉田秀彦(26=新日鉄)の五輪2階級制覇の夢が破れた。初戦となった2回戦で、ルーマニアのクロイトルに2分2秒、小外掛けでまさかの一本負けを喫した。女子66キロ級の一見理沙(18=土浦日大高)も2回戦で呉〓玲(台湾)に敗れ、日本は3日連続で金メダルを逃すことになった。

 両者に指導が与えられた直後だった。ふっと気を抜いたように吉田の足がそろった。そこを小外掛けが襲った。初戦2分2秒の一本負け。バルセロナ五輪78キロ級王者が畳に横たわる姿に日本の応援団は思わず顔をおおった。

 会場入りしたときから吉田の様子はおかしかった。視線は一点に定まらず、畳に上がっても小刻みにジャンプを繰り返し、落ち着きがなかった。藤田弘明強化部長は「朝は緊張している様子はなかったが、試合前はガチガチだった」と証言した。

 クロイトルに苦手意識があったことも事実だった。18日に組み合わせが決まったとき、「最悪だ」とこぼした。昨年の世界選手権(幕張)では3回戦で対戦し、勝ったものの旗判定のきん差だった。

 吉村和郎コーチは「相手のえりに詰め物がしてあって、ちゃんと持てなかったようだ。ただ、負けて抗議してもしようがない」と話した。コンディションもベストにはほど遠かった。4月に右足甲の関節をねん挫、回復が予想以上に遅れ、アトランタ入りしても痛みは引かなかった。しかし本人は「試合場に上がって集中すれば関係ない」と言い張っていた。

 日本人として初めての五輪2階級制覇がかかっていた。バルセロナ大会の78キロ級ではオール一本勝ちで圧勝。高校の先輩・古賀とともに階級を一つ上げ、二つ目の金メダルをめざしていた。これで日本は初日から3日連続で金メダルなしと追いつめられた。「この流れは明日(23日)古賀が変えてくれるはず」。藤田部長は祈るような顔つきで話した。

 ◆藤田弘明・全日本柔道連盟強化委員長の話

 吉田は朝、選手村でリラックスしていたのだが……。虚を突かれた格好だった。一見は自分から攻めていってやられたし、あれが精いっぱいじゃないか。

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